スティーブ・ジョブズ氏死去、56歳 アップルが発表 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News.
今朝休み時間にケータイでニュースを見て衝撃を受けました。
アップルのCEOスティーブ=ジョブズが亡くなったとの見出しがあったからです。
ジョブズを知ったきっかけ
僕がジョブズの存在を知ったのは暗黒のニート時代。
ネットばかりやってた頃にギズモードかどこかのガジェットサイトでジョブズの記事を読んだのんがきっかけです。
年収1ドルのCEOがいる・・・
当時は拝金全盛の時代でした。
小泉政権でホリエモンがバラエティーに出て、なんでもない女子大生や主婦が株を始めるとかそんな空気の頃。
20-30代のIT社長が次々に億万長者になって、芸能人やレースクイーンを侍らして豪遊してました。
当然僕は無収入、イヌの散歩くらいしか家のこともしていませんでした。
存在自体が辛かったときです。
サッカー選手のカカがACミランで活躍しているニュースを家族で見ていたとき、高年収のカカが僕より年下だと判明した瞬間の母のため息と、そのとき感じた強い痛みは今も忘れられません。
そんなときだったので、ビジネスの最前線にいながら年収1ドルという事実は税金対策のためだったとしてもとてもさわやかであり、いろんな意味で目を覚まさせられた気がします。
アメリカンドリームを知る
もちろん、年収1ドルでありながら同時に彼はアップルの株を持つことで億万長者となっている、ということもすぐに分かりました。
今と違って、日本のネット界ではジョブズはそんなに話題になっていなかったと思います(IT系では知りませんがVIPやそこらではそうでもなかったと思います)。
その状況で、サクッとジョブズの名前を出せた僕はほんのわずかな優越感に浸れたものです。
そして、ジョブズ関連の情報を集めるうちに、Googleの創業者二人であったり、マイケル=デルであったりといった、アメリカの新興億万長者のことを知るようになりました。
特にGoogleのページランクが創業者の卒論であり、特許は最初大学が持っていたという話にはとても感銘を受けたものです(大学に行こうと思ったきっかけのひとつです)。
以前記事にしたGoogleの副社長のマリッサ=メイヤーさんの記事に目がとまったのも、そうした背景があってのこと。
ジョブズによって開かれた世界は、とても魅力的で刺激的でした。
ブランドイメージの回復
ジョブズの経歴で特にスゴイのは、やはりアップルをクビになって数年後、アップルが落ち目になったときにCEOに返り咲いてからでしょう。
その頃、ウィンドウズの圧倒的優位性の確立などもあってアップルは完全に落ち目でブランド力も消え失せてたそうです。
そんな中、暫定CEOとしてアップルに帰還したジョブズは、まずアップルのイメージアップのためのCMを打ちます。これが、超スゴイCMでした。
Think differentという、動詞+形容詞という文法無視の強烈なメッセージ。
商品は一切見せず、ただただ理念を語ることに徹したCMは今見ても全く古びていません。
初代iMac登場
さて、アップルの理念を復活させてから最初の大仕事はメイン商品であるデスクトップパソコンの新型開発です。
もはや懐かしくもありますが、家電のデザインをそれまでと全く異なる次元に導いた、あの掃除機フォルムのiMac初登場です。
今でこそジーパンとタートルのセーターにスニーカーというアメリカのフランクなスタイルが定番ですが、この頃はスーツでプレゼンしています。
見た目も肉付きが良くて若々しいですが、神がかったプレゼンはこの頃から既に完成されています。
この新型パソコンがどれだけの旋風を巻き起こしたかについて、今更述べる必要はないでしょう。
CMもストーンズの名曲を使ってたりして、ホントに楽しい。
CMの終盤には、またしてもThink different。
前回はメッセージだけだったのが、今度は実例を伴っての有言実行メッセージとして再登場です。格好良すぎです。
MP3プレーヤー市場を席巻
ジョブズはしかし、ここで満足しませんでした。
次に着手したのが、iPodです。
音楽の世界に乗り出す根拠としてジョブズはごくシンプルに「We love music」と言っています。
MDが緩やかにCDから移行していたときに、アップルはmp3デバイスを持ちこんで殴り込みをかけ、数年かかったものの見事に音楽の聴き方を、生活を変えてしまったと思います。
mp3は音質が下がるからCD/MD派を破るのは無理、なんて意見が初代iPodが出て数年後にも普通にされていたのを覚えています。
あれは失敗作でアップル信者御用達のアイテムだと。
ところがジョブズの読みは見事に当たり、iPodはバージョンを新しくするごとにバカ売れ。
音質がいいオーディオは確かに素晴らしいですが、でも例えば僕はセックスピストルズのアルバムやニルバーナのライブアルバム(どちらもマジで最強のアルバムです)をテープで愛聴していました。
フロム・ザ・マディ・バンクス・オブ・ザ・ウィッシュカー(紙ジャケット仕様)
「低音質」か「高音質」か選べるなら、もちろん後者に軍配があがります。
ところが、「聞けない」か「低音質だが聞ける」なら、ほとんどの音楽ファンは後者を選ぶはず…というか、選んだ結果がiPodのブームだったのだと思います。
そう、やっぱり根拠は「We love music.」にあったのです。
良プレゼンのお手本
iPod nano登場時のプレゼンも大変素晴らしいです。
nano登場前は、iPodミニという白黒で容量も小さいプレーヤーが競争力を示していました。
そこに、nanoという新たな風が吹き込まれます。
これぞうまいプレゼンです。
大学生が手を出すプレゼン指南書のどこにもこんなプレゼンのやり方なんて書いてないです。
でも、どんな指南書より遙かに勉強になります。
ジョブズは、プレゼンが技術に依存するものであるとはいえ、大切なのは「伝えたい」いや、「伝えてやる!」という熱意なんだということを教えてくれます。
電話そしてエアー
さて、ジョブズ率いるアップルはその後もiPhoneで携帯電話産業に参入したり、極薄ノーパソ、マックブックエアーを発表したりと次から次へと新規商品を発表していきます。
そのたびにジョブズは神がかり的なプレゼンで世界を湧かせました。
iPhoneの、キーボードを取っ払ったジャイアントスクリーンは今やスマホのスタンダードです。
マックブックエアーの紹介プレゼンの冒頭「there’s something in the air」は名言といっていいです。
このiPhoneのプレゼンは、どなたかが作成したジョブズのプレゼン集ランキングで一位を取ってました。
おお、コメント欄に哀悼の言葉が並んでいますね・・ちょっと僕もジワッと来ました。
そしてその後、ipadが登場するわけです・・・
批判もきわめて多かった
いかに彼がハイスピードかつノンストップで時代を駆け抜けてきたか、分かりますね。
さて、ここまで彼の良い面ばかりを取り上げましたが、彼ほど批判されてきたCEOもいないでしょう。
アップルが情報制限をやったり、ユーザーを囲い込もうとしたりして民主主義的でないとか、1984のビッグブラザーみたいだとはいつも言われていたように思います。
最近はiPhoneの電波不良の対応を非難されました。
持ち方によって電波が悪くなるということでしたが、ジョブズはそんな持ち方しなきゃいいとしらばっくれました。
ところがこの後も批判がやまずに、とうとうアップルはこの問題を解決するためのカバーを無償で配布しました。
こんな風に、ジョブズは傲慢な態度で会社や消費者を振り回しもしたのです。
最後に
ジョブズもここ数年はガリガリで今にも倒れそうでした。
ガジェットサイトには、誰かに支えられてかろうじて歩くジョブズの姿を写した映像なんかもアップされていました。
彼の名言はいくつも残されていますし、是非この機会にいろいろなサイト巡りをしてジョブズという人間を探ってみてください。
さて、彼の名スピーチとしてはスタンフォードでの講演が必ずと言っていいほど取り合げられますが、僕はやはり、彼の本領が遺憾なく発揮された場はビジネスの場だったように思われます。
なので、スタンフォードのやつはあえてリンクしません。
ここにリンクした動画リストこそが彼のプレゼンの神髄、エッセンスだと思います。
それにしても、早すぎる死です。
僕はまだただのおっさん大学生ですが、いつかジョブズには会いたかったです。
面談なんて望むべくもありませんが、せめてアメリカに行って、アップルのイベントに参加するというだけでいいから、生ジョブズを見たかったです。
哀悼せずにいられません。
さようなら、ジョブズ。