偽Perfume

大本命風のダークホース

やべえ・・・ついにのっちさんがメインで夢に出て来た笑

しかもかしゆかと全然役割が違う笑

アスファルト公園

びっしりとアスファルトの敷かれた、木々に囲まれた空間があった。

草原や土の地面と違って子どもが全然いないので、僕とのっちはそこで遊ぶことにした。

ぼんぼんと、持っているボールをバウンドさせるのっち。
ボールはサッカーボールだけど普通のより少し大きくよく跳ねる。

僕たちは適度に距離を取り合って、先ほどまでの話題を軽くリピートしていた。

しかし、のっちはやけにニヤニヤしてて、目がマジだった。

僕はのっちがかなり飛ばしてくると判断して小走りで距離をとった。

のっちは僕がそうするのを見て、バウンドさせたボールを遠慮無しに思いっきり蹴り上げた。

僕は予想以上にすっ飛ぶボールを追うために全力で走ったが、ボールは悠々と僕のはるか上空を越えて飛んでいった。

憂さ晴らし

思いっきりボールを飛ばせるところに来れたから、その鬱憤を晴らしたかったんだろう。

僕たちが今一緒にいるのは、そもそも憂さ晴らしがしたかったからだった。

たまたまお互い鬱憤が溜まった状態で帰りが一緒になったので、勢い余ってカラオケに入ってみた。

フリータイムで入ったところ、混雑のため途中退室させられてしまった。

行き場を無くした僕らはとりあえず公園で飲み物を飲んで、ぐだぐだ喋りながら空のペットボトルを蹴飛ばして遊んだ。

それが意外と面白くて、空ペットボトルに砂場の砂をつめてパスしあっていたのだけれどもだんだん足が痛くなってきて、近くのドンキで安いボールを買うことにした。

このときノリノリだったのっちは、気合いを入れるためということでナース服に着替えた。

それは椎名林檎の「本能」のコンセプトに違いなく、足下はスニーカーのままでどこかちぐはぐだったが、僕はグッジョブと褒め称えた。

僕が林檎さん、と冗談めかして呼ぶとのっちは「テレッテテッテー」とよく分からない歌を口ずさんで喜んでいた。

が、それでいて先ほどのカラオケでは「孤独のあかつき」しか椎名林檎の曲を歌っていなかった気がするものの、そこらへんフリーダムだから気にしないことだ。

それで、いざ気合い充分に公園に戻ってみると、なんとそこには大量の少年少女たちが僕らのいた場所を占拠していてとてもパス交換をしてられる状況ではなくなっていた。

僕らは路頭に迷い、このままお開きにすることも出来ずにぶらついていたところたまたま見つけたのがこのアスファルト公園だった。

僕はボールを追いかけながら、無邪気にボールを飛ばしたのっちと同じく思いっきり憂さ晴らしをしたくなった。

ボールに追いついてトラップして振り向くと、だいぶ向こうに白衣の天使のっちがいた。

のっちは飛ばしすぎたことを謝ることもなく、むしろこちらを挑発していた。
ナース姿で凄んでいるさまはまさに椎名林檎的だった。

「受けて、立つ!!!」

僕はボールを投げて、思い切り足を振り上げて全力でキックした。

ボールはのっちの上を抜けた。

のっちは手を伸ばしてボールをとろうとしたが届かず、今の僕みたいに走ってボールを追いかけた。

僕は雄叫びを上げてのっちの方へと駆け寄った。

のっちペース

その後、僕たちは適度な距離を保ってボールをパスし合った。

特にルールを定めたわけではないが緩くワンバウンドくらいで届く距離だった。

ちょっと大きな声でないと会話出来なかったので、僕たちは声を張り上げて喋った。

「最近色々ありがとう!」

僕はボールを蹴りながら言った。

最近はのっちと組むことが多かった。

というか、誰かに頼み事をしたいときにたまたまのっちの手が空いているということが続いた。

その結果とりあえず何か頼むときはのっちを探す、という流れが出来ていた。が、さすがにのっちにばっかり頼みすぎな気はしていた。
正直言って、忙しさはあ〜ちゃんやかしゆかとそんなに変わらないはずで、単にのっちが暇そうに見えてるだけとも思ってて、そこは申し訳なく思っていた。

のっちは軽やかにボールをトラップしてしなやかなステップでパスを返しながら言った。

「全然!みんな忙しいからね!私で良ければ!」

のっちのパスは方角がでたらめで僕は左右に散らされて体力を消耗したが、僕がボールを追いかける度に「ごめーん!」と言いながら笑ってくれたので楽しかった。

僕もそんなにサッカーが出来るわけでなかったがちゃんとのっちが追いつける範囲でパスを出すことが出来た。

ナース服姿で動きづらそうなのっちに配慮したつもりだった。

ちょうどいいパスが出せると気持ちがいい。

だんだん僕はパスよりも会話に集中出来るくらいに安定してパスが出せるようになった。

のっちはトラップでもたつくことがあるものの、キレのあるパスを返すようになってきていた。
スカートでの運動にも慣れてきたようだった。

僕は言った。

「でものっちだって大変でしょ?!」

のっちは迎合しない。

僕が言葉を発しても、自分のタイミングが来ないと答えない。

自分なりにスカッとするパスが決まるまでは、パスに集中したいようだった。

僕はこの、迎合しないのっちのペースが好きだ。

のっちは何本めかのパスで答えた。

「頼ってくれたほうが頑張れるから大丈夫!」

恋の話

アウトサイドで回転をかけたり、つま先でシュート的な弾道にしてみたりと僕たちは色々遊んでいた。

一方で会話の方に比重を移してもいた。

のっちは他人の恋愛話が好きだという話をしていて、それは僕にとっても非常に納得のいく話だったので多いに盛り上がった。

のっちが特に好きなのは馴れ初めエピソード。逆に、下ネタ一辺倒で来られるとマジで引くわ〜と言っていた。

僕も下品な下ネタは大嫌いだ、と話すと、のっちは「スパイシーマドンナ」みたいな?と切り返した。

さっきカラオケで僕が歌った歌だったwこういうのをサクッと言えちゃうのものっちっぽい。

僕は断固、スパイシーマドンナは下品じゃない、確かに男の誇りとロマンは満ちてる曲だけども、すぐにNGワード連呼したがるどぶろっくなんかは彼等に弟子入りするべきみたいなことを言い返した。

のっちは、逆にあんなにはっきり口に出せる度胸は偉いよ〜というスタンスだった。

滑走路

しばらくするとアスファルトの一角で業者らしき人たちが作業を始めたので僕たちは位置をずらさねばならなかった。

作業はみるみるうちに進み、空間のど真ん中に滑り台くらいの幅で長い滑走路が敷かれた。

滑走路はアスファルトと森の境目手前で急上昇し、空の向こうへと飛び出すようになっていた。

のっちはそれを見て、今回のツアー企画の一つだと教えてくれた。

手製ロケットを飛ばしてその飛距離を競う。
名付けて、No.1コズミックエクスプローラー選手権。

今の所はペットボトルと浮き輪を組み合わせて作ったロケットが本格的で数十メートルも上空に飛んだとかで、ダントツ一位ということだった。

滑走路ができあがるとテスト走行が始まって結構面白そうだったので、僕たちはパスの出し合いをやめてその場に座り込み見学をすることにした。

あんなに良くできた滑走路を走らせられれば、空に物体を飛ばすのは難しく無さそうに見えたが、テスト走行したロケットはどれも滑走路が途切れたところでぶざまに軌道を変えて落下していった。

「もはや無事飛べたら一位みたいな感じだね」

僕が言うと、のっちは

「何だって最初の一歩が一番難しいからね」

と言った。

お互い汗だくで、特にナース服ののっちは多少の色気が出てもいいはずだったが、顔立ちが整いすぎていてむしろ凜々しかった。

「あ、ちゃんとタイツも揃えてたんだ」

よく見ると、のっちはスカートの下に白系の網タイツを履いていた。
PVだとよく分からなかったがポスターでは林檎は確かにタイツを履いていた。

ニヤリとして自慢げに足を組んでみせるのっち。

表彰

テスト走行が終わると、のっちが言ってた飛距離一位の飛行機が登場した。

のっちが把握していなかっただけで、既に選手権の優勝者は決まっているようだった。

それで今は優勝を祝うイベントの予行が行われているらしかった。

いつの間にか僕たちの周りはテスト飛行に使われた作りの雑な風船のような飛行機の残骸だらけになっていた。

僕はそのうちのひとつ、筒型の風船を持ち上げてみたが、思ったより軽すぎてバランスを崩してしまい思いっきりのっちの顔面を風船ではたいてしまった(ただ、激軽の風船なので実際はちょっと押した程度)。

のっちは僕がわざとやったものだと勘違いして、笑いながら別の風船を持ち上げて僕にぶつけてきた。

所詮は風船なので、痛くはないが巨大なので勢いよく僕らは吹っ飛ばされた。

この感触は新鮮で面白く、僕たちはそこら中に転がっていた風船を使ってチャンバラみたいなことをして遊んだ。

しばらくして、スタッフがのっちに「そろそろリハするんで」と声をかけた。

のっちは威勢良く「はいはーい、行きまーす」といいつつ油断した僕に一撃を加えて大笑いした。

のっちの笑顔は、なんかピュアーでこっちも吊られて笑顔になる破壊力がすごかった。美しいんだけども、どこか懐かしく親しみがある笑顔。

僕はのっちに、「絶対コメントとか求められるだろうから、早めに戻った方がいいんじゃない?」と言った。

するとのっちは、「ほんとだ」とハッとして風船を放り投げた。

あまりに早い切り替えがおかしくて、僕は「のっちそんなにコメントしたいの?笑」と突っ込んだ。

のっちは笑ったまま挙手して、「Perfume代表として、すっごくコメントしたいれす」とよりによって最後の最後で噛みながら言うと、悔しそうな顔して笑いながらそのまま駆け足でスタッフさんたちの方へと去って行った。

取り残された僕は午後の日差しを浴びつつ、もう少しここでノンビリしていよう、と思った。

のっちのおかげで僕はしばらくさっきのやりとりを思い出してはニヤニヤしていた。

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