偽Perfume

勉強会に参加したらナントカ学会に勧誘されたでござる

みんな知ってるあのカルト教団に勧誘されたことがあります。

学生の交流会

大学に入ってしばらくして、スポーツや趣味をやるのではなく、勉強を目的にした大学生の集まりがあることを知りました。

長期休みを使って他の大学と交流もしているとかで、学術的な発表の場を設けてもいるということでした。

今やネットを使って全国各地の学生と交流することもとても簡単でしょうし、たぶん調べてみたらいろんな学部でこのような大学を越えた集いは催されているのだと思います。

遊びや出会い目的なら興味は無かったのですが、学術的探求が目的なら面白そうだと思って一度参加したことがあります。

自分でテーマを決めてポスター発表も行わせてもらいました。

がっかりな印象

他大学に行って、会場でポスターを張り出して、そこに1時間くらい立って通りがかった人に自分の発表テーマについてお話ししました。

結構いろんな大学から学生が来ていて人が多かったのですが、見ていて思ったのはやはり出会い目的な空気が強いな、ということです。

僕のところにはあまり人が通りがからなかったので、暇を見て他の人のポスターを見に行きました。

理系とはいえテーマは色々で、中には文系的な経済のテーマでポスターを作った人もいました。

経済ネタはちょっと興味があり、ポスターを見てみたのですがすぐに愕然としました。

いわゆるホリエモンブームの頃の株とかやってサクッと儲けましょうレベルの内容しか、そこには窺えなかったからです。

あんなの、貯金をたんまりためこんだ日本の一般家庭からお金を市場に流そうという下心見え見えのくだらないブームだったと僕は思ってます。

僕は、このネタのポスター作成者に統計データについて質問しようと思いました。

理系学生の卒業後初任給と、その後の年収データは平均値しか示されていませんでした。

僕は、最大値と最小値、あるいは度数分布を見てみたいと思ったのです。
おそらくは正規分布ではなく、二極化しているはずです。

こういう場合、平均というのは集団の性質を示す値として適さない傾向があるのです。

待ってると、ジャラジャラと金属音を立てながら女子大生の取り巻きを連れて発表者が戻ってきました。

茶髪で長身、ホストみたいな風体の男性でした。周りの女性たちといかにもちゃらい感じのかったるいおしゃべりをしていました。

ポスターの前に戻ってきた男性は「さっきうっとうしい質問されたんだよね~」なんて言い出して、「そんなん知るかっての」とゲラゲラ笑ってました。

この人に聞いて、意味ある返答が期待できるかな??と僕は思いました。
そもそも自分のポスター前にいる僕が目に入っていないようです(僕の影が薄い+キラキラ美女軍団しか目に入ってないっぽい)。

僕はこっそりその場を去って、自分の持ち場に帰りました。

熱心そうな学生

早めに片付けして帰ろうかと思ったのですが、僕のポスターのところに少し人だかりがあったので、話しかけてみました。

どうやらちょっとは興味をもってくれる人たちがいたみたいで、ようやく僕にとっても楽しい時間が来ました。

それなりに盛り上がったりしてると、後ろの方で質問待ちみたいにしている男性が目に入りました。

あの人も僕のポスターに興味があるのかな、と思って他の人との質疑応答や雑談が終わった時に話しかけてみました。
僕は基本チキンですが、接客業をやってるおかげで声かけはそこそこ出来るのです。

「とても面白いポスターだと思ったんですけど、ちょっといいですか」
その男性が着ていたパーカーを見ると、彼が運営サイドの人間であることが分かりました。

僕より年下に違いありませんが、きっと学年は上です。にこやかにほほえむ彼は言いました。
「宗教に関してはどうお考えでしょうか」

僕は自分のポスターで、サイエンスのアプローチは宗教と異なる、と冒頭の方のポスターでさらっとふれていました。

「サイエンスは、疑問に対して無理矢理答えをこじつけるよりは、悩むことを選ぶ。

宗教は、疑問に悩もうとせず、とにかく答えを与える。

これが、サイエンスと宗教の違いである。」

と僕は記述しました(ちなみに、これは何も僕のアイディアではなくて、科学者シュレーディンガーの本からの引用です)。

僕はてっきりそこについての質問だと思ったので、該当ポスターを指さして補足しながらそこにある記述を読み上げてると、彼はまっすぐに僕を見て言いました。

明らかに僕の話を聞かないで自分のことを話すような、そんな無駄な威圧がありました。

「宗教って、色々あるとおもうんですよ。
今、環境問題とか、科学が人間に害を及ぼしていて、僕たちはそういうことも考えないといけないと思うんです。」

と、まあありがちとはいえまともなコメントを彼は言いました。

で、彼は続けます。

「なんでそういうことになったかっていえば、それって結局科学がキリスト教を背景にしているからだと思うんですよ。
でも日本には古来から自然と人間の共生の発想があって、これからの科学はそういう哲学が必要だと思うんです」

これも、やっぱりありがちとはいえごもっともな内容です。ていうか、少々くさいなーと僕は聞きながら思ってましたが(^-^;

豹変

「で、僕は・・ていうか”俺”は、宗教をやってんねん」
いきなり丁寧語がタメ語になりました。そして標準語が謎の関西弁に変わりました。

やはり、そっちかと。

彼は自分の宗教の名前を口にしました。

そう、仏教の一派だとかいう、国会に議席を持ってる…
価値をクリエイトするとかのたまってる・・・

彼は僕の曖昧な反応なんかかまうことなく、蕩々と自分の宗教体験のすばらしさを語りました。

「この宗教が他と違うのは、神は自分の中にいるっていうところにあんねんな」

急激ななれなれしさは、多分にマニュアル的です。
標準語から方言の切り替えも距離を詰める意図が透けて見えます。

僕はこの時既にバイト経験もそこそこあったので、この馴れ馴れしさが手段に過ぎないことは簡単に見抜けました。

あれだけデカイ団体の割に勧誘マニュアルも大したこと無いな、と思いました。

さて、彼は気持ち悪い笑いを交えながら延々とトークを繰り広げました。

「俺もな、最初はそんなんありえへんやろって思ったんや。神なんているかーってな(爆笑)」

マニュアルだとバレると、言葉はこんなにも心に届かないものかとかえって感動したくらいです。

アレです、こんなの下手くそなJ-POP歌詞と変わりません。

僕ならもっとマシな原稿書く自信ありますよーなんて心の中でつぶやいたりしながら彼に喋らせておきました。

反撃 by センター文化史

で、あんまり長々と話が続くので僕は大きめの声で彼の営業トークを遮りました。

「インド哲学では、動物をとても大切にするらしいですね」

ちょうど彼は、動物実験はキリスト教の発想だとかいうことを話していたのです。

彼はキョトンとして、
「そうやで、インドといえば仏教やからな」

なんて答えました。

・・・

「インドといえば仏教」

・・・

ktkr!

僕は即座に、
「インド哲学は仏教と言うよりヒンドゥーでしょ?

動物を大切にするっていうのは仏教にもあったと思いますけど、インドでこの話題だったらジャイナがまず来るんじゃないですか」

なんて偉そうに語ったのですが、所詮全部センター試験世界史の文化史で習った内容そのまんま(^-^;

二次や私大で世界史やった人に聞かれたら色々痛いところ突かれそうな程度に過ぎません。

でも彼は、宗教を信奉していながらセンター試験レベルの話にすらついてこれないようで、気持ち悪い笑顔を曇らせて先ほどの雄弁さが嘘のように口ごもりました。

宗教を熱く語る彼が、宗教に関してまさかその程度の知識すら持ち合わせてないなんて思ってなかったので、このときの彼の慌てっぷりには呆れるどころか笑えてきた次第です。

そうです、あの某学会会員はインドがヒンドゥーであることすらよく分かってないらしいのです。

僕は、失礼ですけどマジで失笑しました。

とどめにもう一発

「俺はな、宗教のことにも興味を持って欲しかったねん」

「これからは科学だけやったらあかんって言いたかったねん」

勧誘不可と判定されたのか、彼は熱いトークをやめて締めに入りました。
だから僕は、捨て台詞を彼にプレゼントしました。

「ごもっともですけど、あなたも宗教を分かったつもりにならない方がいいと思います。
もし宗教が、科学と同じか科学以上に深淵なものなら、なおさらです」

無宗教の僕にここまで言われてしまう信者氏、お疲れさまでした。
悪いのはあなたではない、あなたを欺き操った人たちです。

また、彼らが集団として結構恐ろしい組織であることは僕もネットジャンキー時代によく言われ、また見てきました。

なのでちゃんと礼は尽くして「勉強になりました、どうもありがとうございます」と頭は下げて彼を見送りました。

運営に失望

さて、もうやる気も失せた僕は片付けを済まして帰路につきました。
で、思いました。

勧誘の言葉こそ言われてないものの、彼がしてきたのは確実に宗教の勧誘です。

そして、彼は運営サイドの学生が身につけるパーカーを着ていましたから、本来そういう不純な動機で来てる勧誘団体から参加者を守るのが仕事のはずです。

信教の自由はありますから、彼がカルトを信じていようがいまいが彼の勝手です。
でも、ああいう場で勧誘始めちゃうのはどうなんでしょうか。

発表者はいわば弱者です。質問者がきたら無視できません。

女性の発表者なら、出会い目的の男性も必ず来るはずで、そういう人が発表と無関係の話をだらだら始めていたら間に入って仕切るくらいのことはすべきでしょう。

運営は学生で行っているということだったので、彼がそういう宗教を持っていることを知っている人間も当然いたはず。

なのに彼に好き勝手させたというのは、不手際と言って良いと思いました。

僕のところにはその後、定型的な感謝のメールが運営サイドとうちの学校の先輩から届きました。

宗教の勧誘めいたことがあったことを遠回しに伝えて、お礼もちゃんと伝えました。

それで終わりです。
下手につっこんで目を付けられたくなかったからです。

今後は二度とそのような場には行くまい、と決意したのは言うまでもありません。
まあ、そもそも誘われないんですけどね!

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