「灘中の数学学習法」(NHK出版・生活人新書)を読みました。
灘中の数学学習法 (生活人新書)
(当ブログ必殺の生リンク攻撃)
数学が趣味
一応、僕の趣味は数学と世界史です。
もっとも、受験数学でもたいへん苦労したくらいで別に得意なわけではないのです。
ただただ、その論理構築とか、美しさとかが好きというか、惹かれるものを感じるというだけです。
なので、非専門のアマチュア的な立場で大して頭も良くないけれど、数式の世界とか円周率とかになにがしかの宇宙的な奥行きを感じてしまうなんて人とは仲良くなれるんじゃないかと‥
名門・灘
灘というのは全国的に名を知られる超名門校です。
東大や医学部にばんばん人材を送り込んでいるとか‥
僕は中学高校の勉強をかなりおろそかにしてきた自覚があるので、中学どころか小学校から人より多くの努力をしてきたに違いない灘の方々には何となく後ろめたさを感じてしまいます。
東大数学の難しさ
ところで東大の数学入試問題は、面白いものが多いことが世間一般にも知られています。
たとえば99年前期ではサインコサインの定義と三角関数の加法定理の証明を求めたり。
03年前期では円周率πが3.05より大きいことを証明しろと言ってきたり(しかもπを小学校では3とするとかいう議論が盛り上がってたときに)。
08年前期では正八面体を床に置いたときに真上から見た図を書かせたり。
こうした問題からは、いろいろな公式を頭に入れるだけでなく、いろいろな公式や定義の背後にあるもの(精神、スピリットとでも言いましょうか)までちゃんと捉えているかどうかを試しているように思います。
僕には到底手が届かない世界ですが、灘はそんな東大にぼんぼこ学生を合格させているのです。
いったいどんな勉強をしたらこんな問題がすらすら解けるようになるのか、その学習法には非常に興味が湧きますよね!
というわけで図書館でタイトルを見て速攻で借りました。
テーマの食い違い
ところが、全部読んでみた結果正直いってかなりがっかりな内容でした。
そもそもこの本は、NHKの方が昨今の学力低下をテーマにハイレベルな実力を維持し続ける灘の秘訣を教えてもらおうとして出来たものだそうです。
そういうテーマが、多分執筆者である灘の先生をいまいち盛り上げられなかった気がします。
灘みたいに実力でのし上がってきた子たちを教える先生からしたら、学力低下なんてただの甘えにしか見えない気がします。
所詮努力しきれない本人たちの問題、みたいな。
残念ながらこの本を書かれた灘の先生お二方は執筆にほとんど情熱を傾けなかったようです。
恐らくは自校の学生のための授業準備等の時間を削りたくなかったのだと思います。
それくらい、この本は粗い出来映えです。
構成の悪さ
まず、灘は中高一貫なので通常のように中学3年間で一区切りにはなっていないのにも関わらず、この本では章立て構成が「第一章 中学一年」「第二章 中学二年」「第三章 中学3年」+オマケとなっています。
当然カリキュラム上の工夫や主義などはほとんど読み取れません。
ただ時間軸にそってアラカルト的に授業で取り上げたトピックを並べるだけに終始してます。
どのようにして灘は他校の子たちと差を付けるのか、中学で教えた数学がその後彼らにどのように貢献しているのか、などなどの考察は全く無いと言ってよいです。
オマケは何かというと定期試験の問題と解答です。解説は省略されています。
これなんてコピペ??(作業的に)
てかこのコーナー随分多くね?
数えてみたら全体の三分の一がコピペ。新書としてどうなのかと‥
信じられない誤植
書き手の情熱の無さは随所に見られます。
例えば第二章のコラム「よく使われる参考書と問題集」には、本のタイトルと出版社だけが並べられています。
なぜここに挙げた本を使ったのか、実際使っててどうだったかなど、部外者が一番知りたいことにはひと言も触れません。
あ、「詳しい解答付き」というコメントがかろうじて一個ありましたが、要するにその程度です(^-^;
極めつけは第三章の冬の項。
冬休みに学生に出した読書感想文について書かれています。その見出しが
「ニュートン、ハミルトン、ラマルジャン」
‥
…
ラマルジャン???
もしやインドの魔術師ラマヌジャンのことでは?とアマチュア数学ファンに過ぎない僕でもおやっと思います。
「心は孤独な数学者」という新潮社の本の感想文の話としての見出しですので、この本をググったところばっちりラマヌジャンと判明。
一応ウィキペディアでラマヌジャンを調べましたが、彼の名前のアルファベットスペルはRamanujanです。
なのに本文には何度も何度も「ラマルジャン」です。
こんな間違いを数学の先生が(それもよりによって灘の先生が)するわけがありません。
一度でも原稿に目を通したのなら、見逃すはずもありません。
ましてや灘の名前を背負って出版するというのに、です。
ちなみに学生たちが実際に書いた感想文の抜粋に関しても、本の内容についての説明が全く無いのでその本を読んだことのない僕としては何が何やらさっぱりです。
結論
この本は、きっと灘の先生が暇そうな誰かに適当に書かせたものでしょう。
内部事情が書かれたりしているので、一応は関係者か何かに違いはないのでしょうが‥
期待が大きかっただけに、かなり失望しました。
編集部はよくこれでオーケーしたな、と思います。
「灘」の名前を冠していたら中身がすってんてんでも読者はひれ伏すとでも思ったのかな?!なんてことまで思い浮かんでしまいました。
買ったんじゃなくてよかった(^-^;