今日は物語性のある良い歌詞を紹介します!
七尾旅人の「ぎやまん」
七尾旅人の弾き語りアルバム第一弾、蜂雀収録です。
曲名からして異様なムードが漂ってますね!
ぎやまんとはガラスの古称のようです。
びいどろなんかと同じでしょうか。
びいどろの方は理系にはおなじみ、「in vitro(試験管内で)」の用法で今も残っていますが、 ぎやまんという呼び方は今ではほとんど使われていないと思います。
物語の始まり
歌詞は、こんな風に始まります。
蒸し暑い真夏の山道、不思議な呼び声に誘われ垣根を越えると、そこは一面の雪景色・・
なんという幻想的な世界。
歌い始めでこれだけトリップさせてくる歌詞も珍しいのでは。
この箇所だけでもこの歌詞がただものでないことはよくご理解いただけると思います。
「呼び声」とか「結界」とか、行間に尋常じゃないほどの意味合いを漂わせる言葉を忍び込ませていてまるで小説の一節のようです。
古典表現
そしてこの完璧な舞台設定にぴったりの、古典表現が歌詞世界をさらに彩り豊かにします。
落つる、とは落ちるの古語「落つ」の連体形だと思いますが、そういえば古文の勉強で連体止めという、体言止めみたいな表現手法があったはず。
連体止めは余韻を残す表現と書かれていたように思います。
通常体言が続くところを、続けずに止めるのですから余韻も漂いますよね。
キラーフレーズ
極めつけの注目すべきは「してはならぬこと」。
短いのにすごく威力のある言葉です。
まさにキラーフレーズ。
ときどき歌詞にはこういう前後の流れを断ち切っても威力が残るような、そういうすごい一言が登場します。
してはならぬこと、が連想させるのは祟りの類ですよね。
外国語として日本語を学んだりした場合にはこの言葉のニュアンスはなかなか学びづらい気がします。
この国に生まれ育って生きていくうちに根付いてくる言葉のように思われます。
物語の行方
結界を破って侵入してきた男、結界の内側で歌を歌っていた女、二人の距離はやがて狭まり、対面の時が迫ります。
その顛末については、是非みなさまの眼と耳とでお確かめください。
このアルバムにはこんな魅力的な物語がてんこ盛り、キラーフレーズも他にも出てきます。
じっくり楽しめる作品をお探しでしたら、是非。