David Bowieの数ある名作の中で、若干地味目なポジションのアルバム「Station to station」のタイトル曲は至福の境地を味わえる10分間の体験です。
谷間の作品
このアルバムの前後にとてつもない傑作が並んでいるために、あんまり注目されることのない「Station to station」かと思います。
前には、最高傑作とみんなに認識されている「ジギー」があり、ジギーに負けず劣らずのクオリティを誇る「アラジンセイン」があり、クオリティは若干劣るもののこれまた独特な世界観を持っている「ダイアモンドの犬」「ヤングアメリカン」と錚々たる顔ぶれです。
一方、後の方はさらにぶっ飛びまくりのベルリン三部作がずらり。
そんなヒマラヤ級の巨峰の谷間に位置するのが「Station to station」。
下手すると、そんなんあったっけ?と言われかねないような(^ー^;
曲数が6曲と少ないのが印象を薄くしている一因とはよく言われます。
Tonightとは違う
曲数が少ない、というとオリジナルの新曲が4曲?くらいしかない上にいただけないカバー(原曲を際立たせたかったのかってくらいにひどいカバーだと思います)を入れちゃった「Tonight」が思い浮かんでしまうかもしれません。
あれは間違いなく失敗作だったと思います・・・
今聞くと意外に悪くないという意見も出てきつつあるようですが、何がまずいって前作の「Let’s dance」を真似た感が一番まずかったと思います(何せボウイのアイデンティティは「変化」だったはず)。
その後出たNeverなんたらも、全く似たようなアルバムとなっていて、やっぱり今改めて聞いても再評価の余地なんて全く無い駄作だったと思います。
超大曲による幕開け
一方の「Station to station」は、他のどのアルバムとも似ていません。
特に一曲目が10分越えの大曲となっていて、しかも途中で曲調が変わるという超ゾクゾクする展開を備えた至福の体験をさせてくれるキラーチューン。
一分間くらいは何かのノイズが鳴るだけののんびりした幕開けですが、ギターの音が入ってくるあたりからは「おお、これは」と思わせるキレ。
Station to Station (2016 Remastered Version)
デヴィッド・ボウイ
1976/01/23 ¥-1
ゆったりしたリズムに乗せられてぐいぐいと吸引させられて、少し静かな展開となったかと感じられる5分過ぎから一気にノリが良くなってきて曲調が全く変わっていきます。
この中盤から後半にかけてがまたむちゃくちゃ格好良い!
そして怒濤の終盤、ギターとピアノの白熱のぶつかり合いが披露されます。
こんなにワクワクと興奮と熱狂の詰まった曲には滅多に出会えません。
一曲でお腹いっぱいになりそうなボリュームです(^ー^)
聞き終わったら、なんでこれを知らずに過ごしていたのだろうと呆然としてしまうこと間違いなし。
TVC15
6曲しか入っていないアルバムですので、一曲目が10分越えしているとはいえやはり曲数的には少ない印象です。
が、他の曲もどれも独自性の高い、感触の異なる曲となっています。
その中でも僕が特に好きなのが、4曲目の「TVC15」です。
かなり間の抜けた感じのする曲調からはじまって、バカっぽいクレイジーな流れが続くのですが・・・
Transition… transmission…の連呼からなだれ込む問答無用の異様な盛り上がりが凄すぎ。
TVC15 (2016 Remastered Version)
デヴィッド・ボウイ
1976/01/23 ¥250
この強烈なサビでの連呼は、Oh my TVC 15 , oh oh TVC 15というだけの単純極まりないもの。
それだけでこれだけ猛烈なパワーを発散してみせるのですから面白すぎます。
続きはCDで
というわけで。
見落とされがちな「Station to station」ではありますが、これは是非ともコレクションに加えて頂いて損のないものだと思います(^ー^)
あとの4曲も負けず劣らずの個性派がそろっています。