暑い日が続きますよね、怖い話でもいかがですか??
夏の思い出
…こどもの頃夏休み、よく母に連れられて九州の祖母の家に遊びに行きました。
海に行ったり、山に登ったり、温泉を回ったり、おいしいものを食べてまわったり、カラオケに行ったり、まるでエンドレスエイトさながらの日々を送ってました。
…そして夜。
夜は、映画を見たり、ゲームをしたり、花火をしたり、祖母が戦時中のことを話してくれたり。
あるいは、漫画。
母はホラーが大好きで、オムニバスのホラー漫画や往年の作家による怖くて不思議な短編集をよく読んでいました。
それで、夏の暑い夜に僕も読ませてもらったものです。
今やタイトルも作者も覚えていないような、怖い話をたっくさん読んで、時に震え、時に怯えたものです。
最恐は山岸涼子の「汐の声」
山岸涼子のホラーはエンターテインメント性が高いです。
ただ幽霊に怯えるというだけでなく、対抗しうる能力を持った仲間などがいて立ち向かうことがあります。
その場合は怖いと言うよりはおもしろい印象です。つか、かなり面白いです。
が、この作品に限ってはひたすら怖いだけ。
主人公は子役上がりの可愛らしい現役アイドル。
テレビのホラー番組の企画で、曰く付きの屋敷に訪れ、そこで恐ろしい目に遭うのですが…
まあ、割とよくあるプロットである意味王道。
この漫画が群を抜いてやばい怖さなのは、問答無用の圧倒的恐ろしさを誇る決定的1コマによります。
展開がうまいとか、絶望感がすごいとか、そういうのもあるっちゃあるんですけど…
何が一番衝撃だったかと言われると、たった1つのその絵でした。
焼けた市松人形とか、恨みに燃えた殺人鬼とか、伊藤潤二とか丸尾末広とか、やばい漫画はそれなりに見てきたつもりですが、あんなおぞましいものは後にも先にもこれだけだったと断言できます。
母の漫画仲間の間で一番怖い漫画は何って話になったとき、誰かがこの漫画のその1コマについてコメントしたところ、みんな押し黙って同意を示していたという話です。
霊的なものに対して対抗手段をもったエンターテインメント性の高い作品もご紹介しておきます。
わたしの人形は良い人形 (山岸凉子スペシャルセレクション 1)
2位は「うちのママは世界一」
この漫画は短編集のまん中くらいにサクッと入ったのですが、印象が強すぎて凍り付いてしまったのを覚えています。
ある小学生が作文で自分のお母さんのことを書いて、担任の先生がそれを読む。
ただ、それだけです。
ところが、ただただ嬉しそうに作文を読む先生とは違って、読者はある異変がその作文の背景にあることに気づきます。
結構えげつない話で人によってはこの漫画こそ、決定的1コマというか1ページによって怖い思いをさせられる、ってなるかもしれないです。
ただ、汐の声と違ってこっちは読み方によっては恐怖ではなく愛の物語とも読み取れる可能性があるみたいです。
そんなこと言っている人が一人だけ僕の身近にはいました。
こんなにも強く愛する思いがあるんだねって、そんな感想もあるようです。
怖そうで怖くない漫画
絵だけグロかったり何か不快感を催させたりするだけのホラー漫画は腐るほどあります。
でもそういうのは、作者の下心が透けて見える気がして冷めます。こうやったら怖がるだろ、みたいな。
そういうのはホラーではなく、悪い意味でのエンターテインメントなんだろうというのが僕の見解です。