ヘミングウェイ最高!格好いい!!!おすすめ!
ヘミングウェイさんについて
だいぶ前に100円で買ったヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」(角川から出てる短編集)を読んでいるのですが・・やばいです(笑)すんごいおもしろい。
これ、ジャーナリストだったヘミングウェイが作家になりはじめたくらいの頃の作品から順に読めて、作家として着実に進化していく過程が見て取れます。
タイトルにもなっている短編は世界最高峰の短編小説の一つらしいです。
おまけに作者はノーベル文学賞も受賞している、まさしく霊峰キリマンジャロの頂きみたいな存在感です!
素っ気ない文体がなんてクール!
文体は壮麗とか優雅とはほど遠い、ごくごくシンプルではっきり言って素っ気なさすぎるくらいです。
でもって、展開なんて無いに等しく‥だからなに?!って突っ込まれたら「いやべつに何も‥」としか言いようのないものばかりです。
どれだけ退屈な小説なんだ、と思うかもしれませんが、この無愛想極まりなく、淡々と進むだけの物語を読んでいくと、これがまた言いようのない不思議な魅力を放っていることに気づかされます。
この潔さと冷淡さが、とにかく格好いいのです。
思わずニヤリとしてしまう。
逆転の発想?!
独創的な表現をしようとすると、たくさんの修飾語や関連エピソードを盛り込むなどして、どんどん文章は複雑になっていきそうな気がします。
でも、ヘミングウェイはそんなのはクソだと思ってそうです。
すさまじいまでの潔さが彼の文章には満ちています。
たとえば、幸福というとても個人的な思いを、独創性をもって表現しようとすれば色々やり方はあるだろうに、ヘミングウェイの小説ではあっさりと「彼はしあわせだった」のひと言で済ませてしまうのです。
普通はアウトですよね、こういう一般的で誰でも使う言葉でまとめてしまうというのは。
しかし、徹頭徹尾この簡潔無駄なし文章なので、こんな一言も見事な説得力を持ってしまっています。
間で中途半端に情緒あふれる表現なんかがあったら台無しだったと思いますが、そんなこと一切しないで話を終わらせてしまいます。
ある意味ジャーナリスト的ということなのでしょうか。
まだ全体の半分くらいしか読んでいませんが、特に衝撃を受けた短編を紹介します。
二つの心臓を持つ大川
仕事に疲れた男ニックが、山登りをしてキャンプして、釣りをします。
で、自然の中でのびのびします。
・・・それだけです(笑)。
それだけなのに、もう読んでて笑えてくるくらいおもしろい。
この主人公のニック、それなりに背景らしき設定もあるのですが、そこには全然深入りしません。
ありがちな話だと、彼の心の解放と現代文明への批判みたいな流れになってしまうと思いますが、ヘミングウェイはただただ雄大な自然と、その中で生きる男の喜びだけを描きます。
特に釣りのシーンが長いのですが、釣りの分からない僕でも楽しいふしぎ。
ニックが強い陽射しに耐えながらたどり着いた山頂で、夜になり遠くの川に霧が立ちこめてきたころ、空腹が気になりだして料理を始めるところなんて、のけぞりかえるくらいの興奮もの。
ニックが一口目を口に運んだときの台詞がまた最高なのです。
「ちくしょう」とニックは言った。
「ちくしょう、うめえぞ」と彼はしあわせそうに言った。
この無駄の無い、見事に男の感動だけを切り出した表現!!やばい。
殺し屋
これもやばいです。
1行目からして素敵過ぎて惚れ惚れします。
ヘンリー簡易食堂の扉が開いて、二人の男がはいってきた。
ヘンリーって誰?(笑)
こういった固有名詞を大した説明や導入もなしにバシバシ出すのもヘミングウェイの特徴です。
そういう名前があるんだよ、あんま気にしないで先読めよ、みたいな素っ気なさが良いです(^-^)
現実問題、僕たちは日常こういった情報には大量に晒されてることを思えば、そんなに不自然でもないんですよね。
殺し屋というからには、ちょっとした事件が起こるというか、起ころうとするのですが、合間合間に挟まれる軽食堂ならではの食材や、夕食どきのニオイがする食事に来た労働者とのやりとり何かがイチイチ格好いい。
この短編は何人かの登場人物の語り合いが大部分を占めます。
もう、リズミカルリズミカル。
おまけに何かお洒落。何が面白いんだかよくわかんないんだけど、ホントクセになっちゃう。
ヘミングウェイの描く台詞はどれも良いです。
この作品では、ヘミングウェイが自分の文体の魅力を分かった上で色々遊んでみている感じがします。
不思議な雰囲気の、だけどどこか洒落てて不思議な緊張感のある会話を楽しめます。
とにかく、読んでみて!!って言いたい作品です。
後半に続く!
さて、今のところ半分しか読んでないのにこのボリューム感。楽しすぎです。