かしゆかの声ばっか集めると?(ニコ動)

「闇の女王に捧げる歌」に女王大国の源流を見た

とてつもなく面白い児童文学を発見!紹介します。

舞台は英国、主人公は女王!

R=サトクリフの「闇の女王に捧げる歌」です。
ファンタジーなタイトルですが、内容は歴史もの。

タイトルが「歌」となっていますが、ホメロスみたいな叙事詩ではなく、女王直属の竪琴弾きが語るという形式。

作者が児童文学作家のためか読みにくさは皆無です。

物語は古代ブリテン(今の英国)に実在した女王ブーディカが、古代ローマに対して独立を守るために闘ったという史実に基づいています。

「ブーディカ」って、なんかロマンチックでエキゾチックなムード漂う言葉ですよね。この名前は「勝利」を意味するようです。実に勇ましい名前を持つ女王ですよね。

古代ブリテンの屈辱

時代は起源数十年。ローマの皇帝がネロの時代です。

古代ローマはその侵略の過程で、打ち負かした民族にそれなりに寛容だったと言われることが多いと思います。完全に自分たちに同化させずに、そこそこの自治を認めていたようです。

一方、ネロの時代はそういった気風が損なわれて各地で暴政が行われ出したようです。そして、当時新しい領地のひとつだったブリテン島もその犠牲になってしまうのです。

ブリテンの辺境にいたイケニ族という部族は女系で王族をつないでいたのですが、 これがローマには認められなくなりました。

まあ、ローマに、というよりは、ローマの名のもとに好き勝手していた総督に、というのが実態のようですが。

それで、同盟国扱いからただの占領地扱いに格下げされてしまいます。

どういうことかというと、女王で王家を繋ぐという伝統を許されなくなり、ローマの命令に従わねばならなくなったのです。

ローマに逆らったわけでもないのに、勝手に政治をいじくられたイケニ族は当然反発します。

僕たち日本でいうと、ある日突然中国に天皇家の伝統を否定されるようなものでしょう(そもそも日本は中国の領土じゃないですけど、異民族による自国文化の否定という意味での例です)。

さて、そんなむちゃくちゃをされたイケニ族ですが、相手が超強大なローマなので下手に刃向かうこともできません。

ローマ役人の横暴

そんなわけで、イケニ族はローマの役人の接待をさせられても、渋々応じざるを得ませんでした。

そして、ローマ兵士の偉いおっさんが15ー16歳で美少女の姫に手を出そうとします。
姫には婚約者がいて、このローマの偉いおっさんの不穏な動きに鋭敏に反応、飛びかかって殺してしまいます(このイケニの若者かっちょいい)。

しかしこれが悲劇の始まりでした。

婚約者の青年は惨殺され、姫は妹もろとも兵士達に輪姦、女王ブーディカも服を脱がされムチで散々に打たれます。

古代というか、近代以前までは割とよくあったことなのでしょうが、やっぱり読んでて辛いシーンでした。

立ち上がるブリテン

さて、ここで女王ブーディカはぶち切れるかと思いきや、耐え忍ぶことを選びました。ひょっとすると娘達にも耐えるよう指示していたかもしれないです。

そして、役人たちが去った後。
ローマに立ち向かうべく、女王はとてつもないリーダーシップを発揮し出します。

イケニ族だけでなく、同じく虐げられた周辺諸部族をまとめ出すのです。
まるでガリアにおけるウェルキンゲトリクスみたいに、軍勢はどんどん大きくなっていきます。

他の部族も、きっとローマの役人たちにむちゃくちゃされたのでしょう。
こういうのは、割と華やかな話の多い古代ローマの陰部として、決して見逃してはならない側面だと思いました。

荒野の決戦

ブリテンはローマの本拠イタリア半島からは遠く離れていましたので、軍団も一部にしか駐屯してませんでした。

その勢力からすれば、圧倒的に反乱軍の方が優位で、女王ブーディカ率いるブリテン軍はローマを次々に打ち倒していきます。

ところが腐ってもローマ、劣勢でも賢く立ち回るのはお家芸です。

歴史の事実的にも、ブリテンがローマに勝利はするまい、ということは分かっているわけです。
その結果が「悲劇」ということです。

ローマは劣勢をものともしない見事な戦略により、ブーディカの大軍勢を打ち破りました。
壊滅的ダメージを被ったブリテンは再起不能となり、ブーディカもひっそりとその命を絶ちました。

歴史が加える物語の深み

以上が物語のアウトラインです。

是非とも、竪琴弾きの叙情豊かな語り口で楽しんで頂きたいところです。

ところで、本書巻末の訳者後書きに、テムズ川河畔に立つブーディカの像(冒頭の画像)に関する記述があって、非常にロマンチックな解釈を催させます。

ブーディカという名は、ケルト語で「勝利」を意味するという。
つまり彼女も、もう一人の「ヴィクトリア女王」なのである。
像の礎石に彫られた詩人ウィリアム・カウパーの献辞には、こうある。
「シーザーが夢想だにしなかった領土を、
汝の末裔たちは支配するだろう」

ヴィクトリア女王…世界史好きでなくてもご存じでしょう、若くして大英帝国の女王となり長く王として君臨して世界各地を支配した彼女と、ブーディカはおなじ名前を持っていたというのです。

闇の女王へ

あの日、ローマに敗れ失意の中絶命したブーディカ。
もしブーディカが英国がたどるこの未来を知ったら、どう思ったでしょうか?

自分と同じ名の女王が、同じブリテン島を拠点に国を率いて、ローマを遥かに凌駕する地球の王者たる大帝国を築き上げるなんて、ばかげた妄想にしか聞こえないことかもしれません。

でももしかしたら、女王ヴィクトリアこそは、無念を晴らすため再度ブリテンの地に降臨したブーディカだったのかもしれません。

ま、さすがにロマンチックすぎる妄想なんでこんくらいでやめときます(^-^;

民族違うやん、とか色々基本的な部分でのつっこみがあることとは思いますが、まあそこはご愛敬ってことで。

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