偽Perfume

ポーは最高の恐怖作家「メールストロムの旋渦」

夏にエドガー=アラン=ポーの作品を読みあさったので、しばらくポー特集やります(^-^)
ちなみに貧乏人なんで全部青空文庫からです。

ラブクラフト経由でポー氏へ

ポーは僕が愛してやまないラブクラフトの作風の元祖として度々指摘される作家です。
なんといってもその見た目が迫力満点、ヒトラーみたいです(中傷のつもりはなく単純に見た目だけの話でごめんなさいです)。

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Edgar Allan Poe 2“. Licensed under Public domain via ウィキメディア・コモンズ.

ラブクラフトもそうですけど、インパクトある不思議な小説を書く人って見た目も結構インパクトあることが多いですよね。

Kindleでは著作権フリーの青空文庫も読めますので、Kindleペーパーホワイトを持っていた僕はポーの作品を気軽に手に取ることが出来ました。
まず読んだのは「メールストロムの旋渦」。旋渦は「せんか」と読み、渦潮のことです。

メイルストロムってよくスクウェアのロープレに出てきた気がします。
わりと強力な水系魔法みたいな感じで(曖昧(^-^;)。

で、内容としては大自然の恐ろしさを描いた作品となっています。

ドキュメント的なものか?とも取れるかと思いますが、これはれっきとした文学であり、しかも恐怖の探求により人間性を発掘することに成功した名作だと思います。

翻訳の関係か文体の魅力はあまり感じませんでしたけど、内容が良いです。

イントロがうまい

タイトルは渦潮(うずしお)のことなので、海が舞台となるのですがイントロではいきなり山に登ります。

これから渦潮での恐怖体験を語ることになる男性が、話を聞きに来た「私」を絶壁の崖の上に連れて行くところから話ははじまります。

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DSC00087mosken” by Jostein TorstensenOwn work. Licensed under CC BY-SA 2.5 via Wikimedia Commons.

渦潮が発生する海を見渡せるということで連れてこられたところなんですけど…

この場所がまた、標高は高いし絶壁だし風は強いしで早くも怖いのです。

なんで渦潮について語ろうとしている小説で、高いところで不安定な状態にさらされたときの恐怖を最初に描くのか。

ここがミソというかポイントだと思うのですが、作者は人間と自然の対比をして、人間が自然の中でちっぽけであること、またそのために恐怖を感じずにいられないことを端的に伝えたいのだと思います。

読者にテーマの宣言をしているのでしょう。
人間は弱い存在だ、自然の中では縮こまって恐れおののくのだ、と。

それを言葉にして主張するのではなくて、読者に半ば無理矢理の追体験を通じて感じさせるところにポーの腕の確かさが見えます。

まさに悲愴

そして話は渦潮へと移ります。

非常に危険な渦潮モルケー・ストロム。
これの発生する近辺では漁が非常に捗ることを経験的に知っていたため、脱出のための時間を見積もった上で危険水域で漁をしていた兄弟のうち弟の方が語る体験談です(「私」を山に連れて行った人です)。

彼らは脱出のタイミングを見誤って渦潮に突っ込んでしまうことになるのです。

イントロで宣言された、自然を前にした人間の弱さ、そこで味わう人間の恐怖の再現です。

渦潮から逃れられないことを理解した瞬間の、漁師の絶望たるや…
その絶望の描写がまた見事でした。

私は月の光でその文字面をちらりと眺め、それからその時計を遠く海の中へ放り投げてわっと泣きだしました。

海に時計を放り投げるって…
もう絶対に助からない。
そう思い知ったことが分かる、息詰まる哀しみのシーンです。

ベートーヴェンの「悲愴」並みの悲愴…
あのピアノが聞こえてきます。

悲愴だけでは終わらない

ただし物語は単に恐怖と悲劇を描くだけでは終わりません。
イントロで宣誓されたテーマの反復では終わらず、一歩深めようとする試みがみられます。

追い詰められた人間は、自分の存在を遥かに凌駕する自然の驚異の前でどうするか。
なすすべ無く飲み込まれるだけなのか、挑戦する場合、それでもやはり無力なのか。

ここは一番の読みどころと思われますので、ネタバレしません。
一応言うと「人間は自然に勝つ」なんて脳天気な終わり方はしません。

是非とも手に汗握りつつ、迫真のドラマを体感してみてください。
無料だし(^-^)

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Maelstrom-Clarke” by Harry Clarke – Printed in Edgar Allan Poe’sTales of Mystery and Imagination, 1919.. Licensed under Public domain via Wikimedia Commons.

うづしほ

ちなみに、この作品なぜか森鴎外も翻訳しています。
文語文なので読みにくいですけど、さすがに格調の高さは段違いですね(^-^;

タイトルだけで見事に差別化されています。

上で引用した文は次のようになっていました。

わたくしは涙をばらゝと飜(こぼ)して、その時計を海に投げ込んでしまひました。

ばらばらと、ってのがいいですね!
でも始めに紹介した版の方が解説付きなので、読みやすくてお薦めです。

文語文がすらすらとは読めない僕みたいな人は、ですけど(^-^;

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