発症したら絶対助からない狂犬病。エボラよりさらに凶悪なこの病気に挑んだ医師たちによる論文に心震えるほど感動したのでご紹介したいと思います(といっても今日は前座)。
エボラ以上に恐怖の狂犬病
狂犬病の恐ろしさは、発症すれば100%死ぬことです。
エボラ出血熱は致死率数十パーセント(高いと80%近く)。
風邪やインフルなどよくある感染症ではまず死ぬことはないですから、それらに比べると遥かに高い致死率です。
しかも「出血」なんていうグロテスクな名前がついているので結構怖い。
ワクチンは現在開発中のようです。
エボラ熱、ワクチン臨床試験を西アフリカで1月実施へ=WHO – WSJ.
米国でも感染の広がるリスクも出てきていることですし、治療薬も含めて来年には続々と登場しそうな感じです。
一方、狂犬病はワクチンが既にあります。
最初に作ったのは、個人的に超のつく天才だと崇拝しているパスツールですが、その物語は今回は置いておきます。
狂犬病は感染してから発症するまでに数週間から数ヶ月かかるのが特徴です。
普通は感染したらもっと早くに発症しますよね。
世界最恐のくせに結構のんびり屋さんのようです(^-^;
で、こののんびりしている最中であればワクチン接種により発症を防ぐことが可能です(もちろん事前のワクチンがあればなおよい)。
ところが感染に気付かないまま発症してしまうともう手遅れ。
なんと、致死率は100%(2004年以前。以降でも99.99%)。
エボラの比じゃないです。
エボラは1万人かかったら最悪の場合でも2千人は助かります。
けれど、狂犬病は全員死にます。
かかった獲物は一人も離さない、無慈悲な死に神が狂犬病なのです。
エボラウイルスは糸状の寄生虫のような見た目が気持ち悪いですが、狂犬病ウイルスの形状は弾丸。
発症まではゆっくりですが、発症してからは弾丸で撃ち抜くかのような致命傷を食らわせて獲物を死に至らせます。
症状も極めて悲惨
狂犬病は野生のコウモリや狂犬病を発症しているイヌに噛まれたりして感染します。
発症すると、最初は風邪みたいな症状に過ぎないのですが、次第に恐水症といって水を恐れるようになります。
飲み込みをしたとき、のどの筋肉が痙攣して非常に強く痛むので水を怖がるようになるのです。
結果、唾液も飲み込めなくなるため発症した患者は唾液をまき散らします。
この唾液中には狂犬病ウイルスが含まれているので、恐らくは恐水症は狂犬病ウイルスの拡張戦略です。
この残虐な死に神ウイルスは獲物を壮絶な苦しみで洗脳し、自分の分身をばらまかせるのです。
そうして完全に死に神に乗っ取られた結末は、やがて全身に痙攣が波及、呼吸も出来なくなって死に至ります。
症状の中に精神錯乱が入れられているのを見たことがありますが、こんな状態でまともな精神なんて維持出来る方がおかしいと思います。
ウィキペディアの狂犬病の記事(閲覧注意です)では、狂犬病を発症してしまった患者の写真が載っています。
両手を拘束され、のけぞりかえるようにのたうつその姿からは非常な苦しみが見て取れます。
残虐な死に神が上空から見下ろしていそうな、そんな悲惨極まりない光景です。
かなり衝撃的な写真ですので、一応閲覧には注意してください。
ありがたいことに日本では狂犬病予防法の制定や沢山の人々の取り組みでこの死に神の撃滅に成功しています(ご先祖様万歳!)。
が、世界では年間50000人がこの病気により命を落としています。
プロローグ;2004年アメリカ
日本だと想像の付きにくいことですが、世界では狂犬病で命を落とすということはまだまだ想定しなくてはならないリスクのようです。
子どもが外で遊んでいて野生動物に噛みつかれたとして、すぐに狂犬病ワクチンをうたなかったら?
そんなことは日常的に起きそうなことです。
そして2004年アメリカの田舎で起こった悲劇のはじまりはまさにそんな日常に潜んでいました。
15歳の女の子が、窓にぶつかったコウモリを助けて逃したときに、そのコウモリに運悪く指を噛まれてしまったのです。
このとき彼女は、傷口の消毒を簡単にオキシドールで済ませただけでした。
ころんだときなどの普通の傷なら処置はそれで十分だったのかもしれません。
けれどもこのコウモリは狂犬病ウイルスの保持者でした。
この死に神ウイルスは獲物に取り付くといつもするように、ゆっくりゆっくりと神経を伝って中枢に侵入していきました。
その間、女の子は普通に学校生活を楽しみ元気に生活していました。
彼女に異変が起こったのは一ヶ月以上経ったある日のこと。
全身がだるくて、コウモリに噛まれた左手がしびれてきたのです。
この日から、彼女の容態は日に日に悪化の一途をたどりました。
つづく。
(追記2014/11/10)
女の子がコウモリに噛まれた状況について、当初「教会の裏手で遊んでいたとき」としたのはこの後紹介予定の論文とは異なる記述でした。
訂正してお詫び申し上げます。