友人に対して告げる
「ここで別れだ」
なんと切なく、胸をつく言葉でしょう。
ガリアとは?
そんな言葉に出会ったのが、村上恭介の「ガリア戦記」です。「ガリア」は今のフランスのあたりのことで、紀元前の頃の呼び名です。

ドラクエみたいなマップがまたそそる
ガリアの人々は人が良くてだまされやすく、統一国家として連帯していたとも言いがたい状況でした。
そこを名将カエサル率いるローマ軍に侵攻されて劣勢に立たされていました。
ガリアの英雄
そんな劣勢のガリアに、突如現れた若きリーダー。
それがこの小説の主人公ウェルキンゲトリクス。
彼はばらばらだったガリアの諸部族をまとめあげ、着々と侵略を続けるカエサル率いるローマ軍に反抗を開始します。
希代の天才カエサルに負けず劣らぬ知略を用いて、ガリアの誇りを胸に劣勢をはねのけていきます。
そんな緊張感ある舞台設定ではあるものの、歴史の事実を少しでも知っていたらローマのカエサルが最終的に勝利することは見えてしまいます。
そんなわけで、このガリアの英雄は必ず敗れる宿命を背負う悲哀をかもしていました。
見所は友情
特に印象的だったのはウェルキンゲトリクスの片腕である腹心の一人が、ウェルキンゲトリクスに別れを告げるシーンです。
ガリアがローマにあらがえたのは、なにもウェルキンゲトリクス一人の活躍によるわけではありませんでした。この腹心との協力体制こそが、弱小ガリア最後の抵抗を可能にしていました。
そんな二人はいくつもの策を巡らしたものの、仲間内の乱れとカエサルの驚嘆すべき天才的軍才を前に屈せざるを得なくなります。
そして、最後の別れの挨拶を交わすのです。
「ここで別れだ。俺はあのローマの野心家のところに行く」
冒頭で掲げた、別れの言葉です。
ローマの野心家とは、言うまでもなくカエサルのことです。
このシーンこそがこの小説一番のみどころであり、この上ない悲しみが僕の胸には響きました。
ここに至る流れとその場で交わされる友情のやりとりは必見です。