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お薬選びのための基礎知識:高校化学編

今日は自分で薬を選ぶときのベースとなる高校化学の内容を確認したいと思います。

その1:酸塩基

ドラッグストアで自分で薬選びをする場合、まずは最低限成分名を読めることが必要です!
これには理論化学の酸塩基、そして有機化学が役立ちます。

たとえば前回登場した第一世代抗ヒスタミン薬、マレイン酸クロルフェニラミンという物質名。
高校化学を思い出せば「シュウ酸カルシウム」や「硝酸銀」に似ているな、と気づきます。

これらは酸と塩基が中和して出来たもので、塩(えん)と呼びました。食塩のNaClも塩酸と水酸化ナトリウムの中和で生成するもので、代表的な塩です。

もっとも、食塩はそんなことをせずとも大量に地球じゅうにある海水を蒸発させて作っていると思います。

塩は水に溶かすと酸由来の部分と塩基由来の部分に分離します。

だからマレイン酸クロルフェニラミンは、服用して溶けるとマレイン酸部分とクロルフェニラミン部分に分離します。

そして、このように酸部分と塩基部分からなる薬は大抵はそのどちらかだけに薬効があります。

ごく微量で効くのは有効成分だけ

二つあってどっちかだけしか作用しないなんて、そんなことあるか?と思う方もいるかもしれません。
もう一つの方だって、何かの作用を及ぼすのではないかと。

が、お薬というのはほんの僅かな量しか入ってないのです。

なので、通常はどっちかしか効きません。

例えば鼻炎薬に入っているマレイン酸クロルフェニラミンは一日量12 mgです。

12 mgと言われても実感がないかもしれません。
学校の実習で化学物質を秤量したとき、12 mgなんて耳かきにちょろっとのっかるくらいのホント微量でした。

錠剤はたぶん100 mg以上ありますから、僕らが飲む錠剤のうち、お薬は10%くらいの重量しか含まれていないのです。

クロルフェニラミンの分子量(MW≒275)はマレイン酸の分子量(MW≒116)より大きいので、マレイン酸クロルフェニラミンのうちのマレイン酸部分となると、全体の5%以下になります。

そんなにちょびっとなので、薬でもない成分が作用するということは考慮して無くていいのだと思います。

どっちが有効成分か知っておく

そんなわけで塩タイプのお薬では基本的にどちらかだけが作用して、もう一方は恐らく保存や製造の関係で選ばれるオマケみたいな部分だと判断してよいです。

塩にすると極性は高まりますので、水溶性は向上して吸収しやすくなるなんて側面もあるかもしれませんね!

調べ物をしたり、専門家に質問するときは薬効のある方だけ聞く方がスムーズにカウンセリングが進むこともあると思います。

例えば、「マレイン酸なんとか・・」と店頭で聞いても、薬本体の名前ではないですので答えに窮すると思います。

でも「なんとかクロルフェニラミン」で通じないなんてことは絶対ありません。
通じなかったらそいつはモグリですよ笑。

ほかによく使われるオマケの部分としては、塩化物イオンが挙げられます(これなんて所詮食塩の片割れです)。
塩化物イオンは塩酸が電離して生成しますから、お薬の名前的には「塩酸なんとか」になります。

もちろん、いわゆる塩酸が入ってるわけじゃないです(^-^;
塩酸は常温で気体ですし、胃酸に含まれているとはいえ超危険です。

ところでこれは無機化学の復習ですが、金属イオンはプラス電荷の場合、「元素名+イオン」です。

なのでNa+はナトリウムイオン、Ca2+はカルシウムイオンとなります。

一方、マイナス電荷の場合は「~化物イオン」と呼ぶのが普通ですから、Cl-は塩素イオンではなく、塩化物イオンです。

塩素イオンといったらCl+というコズミックなものになってしまいます(^-^;

両方作用を持つパターン

さて、何事にも例外はあります。

ビタミンCは化学的にはアスコルビン酸といって、酸です。
お薬では塩になっていて、塩基としてナトリウムを含む場合があります。

ナトリウムは塩分コントロールをしている方々にとっては気を付けなければならないものですし、ビタミンCのお薬は大抵1 gとか2 gのビタミンCが取れるようになっていますから、塩分もそれなりに取ってしまうことになるはずです。
この場合は塩の一方でなく、両方が作用することになりえます。

ですから、高血圧などで塩分を気にされる方は、ビタミンCを選ぶときにナトリウム以外の塩基を使ったもの(カルシウム塩などがあります)を選んだ方が良さそうです。

今日からできる名前チェック

塩タイプは名前の間や語尾に「酸」とあるので簡単に見抜けます()

あるいは、もっと分かりやすく「~~マレイン酸塩」とか「……塩酸塩」のように塩であることをハッキリさせた表記を採用している場合も多いみたいです。

お手持ちの一般薬(処方せんなしで買った薬)の成分を見て、そういうのが無いかどうか探してみてください。

そして、酸と塩基に分けて、どっちがお薬として期待されているものか調べてみると、今度から薬探し能力が向上すると思います!

慣れれば成分をパッと見て「ああ、これは塩タイプだな。それに多分薬なのはこっちだな」と分かるようになります。
というのも、オマケで付いてくる酸や塩基は種類が限られるので、色んなお薬で目撃することになるからです。

その2:エステル

名前に酸が付くのに塩じゃないものがあります。
それは、酸そのものであるか、エステルであるかです。

酸そのものが使われているものとしては、ウオノメ用のテープに入っている「サリチル酸」なんかがあります。

エステルとしては、「アセチルサリチル酸」すなわちアスピリンがあります。

エステルは有機化学で学んだとおり「オキソ酸とアルコールが脱水して結合」したものですが、この場合は名前を分けて認識する必要はありません。

ご存じのようにエステルは共有結合ですから、水に溶けて分離したりはしないからです。

そんなわけで、今日はお薬選びに役立つ高校化学のおさらいでした!
是非、今度ドラッグストアで活用してみてください。

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