偽Perfume

空飛ぶバイトマン

仕事で一番イヤだったものが、恍惚を催す素晴らしいものに変わる‥そんな経験、ありますか?

天井作業

僕はつい最近、すごくイヤだった仕事が本能的に欲してしまうくらいに魅力的なものに変わってしまいました。

イヤだった仕事というのは大きい脚立に登って天井にタッカーを打ってポップやチラシをつるす作業です。

ちなみにタッカーとは、壁に芯を打ち込むタイプのホッチキスと考えてもらえたらいいと思います!

大きい脚立は、一番上に立つなと警告が書かれています。

そこで、使う時は一番上から二番目の段に立って作業します。
作業をしてて、常に「落ちたらケガする」という強迫観念に襲われて、とてつもない精神的疲労を負います‥いや、負ってました。
あのときまでは…

転換点

先月のことです。

僕は店長に、花粉症対策使用に医薬品コーナーを模様替えしたいからつるしてるポップとかも交換しといてくれと指示されました。

それはつまり、大きい脚立を使って天井相手に作業しろということですので僕は正直気が滅入りました。
でも、仕事を頼まれた以上は喜んで引き受けてやれるだけやってみる、というのが僕の主義です。

とはいえ何度も怯えながらやってきた高所での作業は、やはり喜んでばかりはいられないものです。
僕は細心の注意を払いながら、上から2段目までとりあえず登って、最上段に尻を載せました。

座ってる分には安定していますので、大して怖くないです。
問題は、立ち上がってからです。

そっと立ち上がると、眩暈に似たふらつきが来ます。

特に脚立から手を離す瞬間が一番ヤバイです。
離した手を無事天井に付くことが出来たら、ひとまずは安心です。
ここで一息つきます。

で、作業に入ります‥作業の際には、少々危険な橋を渡る(くらいの覚悟)が求められます。

多少は不安定になりますし、勢いをつけたり無理な体勢をとる必要があるからです。

バイトごときが大けがして、会社がどれだけ助けてくれるのかも不透明です。
そんなことも恐怖を煽っていたと思います。

さて、僕が天井に手をつき店内をざっと見回したときです。
今まで僕を襲っていたくらぁっとした眩暈のような感覚が、そのときある種の快感みたいのを帯びている感じがしました。

これは、ひょっとして眩暈や恐怖ではなく、快感なのかもしれない‥

そう気づいた途端に世界ががらっと変わったのを感じました。

身体が僕を落ち着かせる

僕は何が変わったかを考えました。
下を見ると、やはりドキッとします。
そうです、恐怖はやっぱり恐怖のままです。

何が変わったかというと‥落ちないように自分の身体をコントロールすれば大して恐れる必要はないことに、身体が気づいた点でした。

つまり、高所でうまく自分をコントロールすること、落ちないようにバランスを取ることに快感を覚え始めたようです。

こう言うと、まるで今までより危険なことにチャレンジしてみたくなったみたいに受け取られてしまうかも知れませんが、それはちょっと違います。

どちらかというと、今までより慎重になったと思います。
今までは、ただただケガするのが怖くてビクビクして、ちゃんと周りが見えていませんでした。
自分の身体がどこにどういう状態であるのかすら、意識を回せていなかったと思います。

今は違います。

どこにどう身体を配置すべきか、どうすれば安全か、よりリスクなくタッカーを打つ方法は‥とかを楽しみながら考えて仕事してます。

おかげでスピードは上がりましたし、みんな嫌がる仕事を率先してできるようになったので頼まれることが増えました。

脚立に登るときにはやってやるぜ!なんて意気込んだりしてます。

脚立の上は、天井が近いもののちょっとした空みたいな雰囲気です。
そう、僕は今や、空飛ぶアルバイターなのです!!!

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