チャンドラーの「長いお別れ」にある名台詞にまつわる僕の個人的見解を述べてみます。
未読者へ
最初に、これからネタバレを含む話をするので一応未読者は読まないようにと注意喚起をしておきます。だがしかし。以下ネタバレです、と僕が宣言するまでは未読の方こそ、むしろお読みいただいた方がいいのかもしれません。
長いお別れはとても有名でミステリランキングで一位となったりすることもある作品ですので、これをネタバレしてしまうのは非常に忍びないです。
ただ、有名なだけあって名言が一人歩きして未読なのに台詞だけ知っているという状況にはなりやすいと思います。
なかでも「ギムレットには早すぎる」はウィキペディアの記事にも登場しており、特によく知られたものだと思います。
この台詞は、テリー=レノックスという人物が発したものなのに、主人公フィリップ=マーロウの台詞だという間違いがよくあるらしいです。
ですが未読の方には、僕は敢えてこう言わせてもらいたいと思います。この台詞は、マーロウのものだ、と。
では、以下ネタバレありでその理由について述べます。
実情
はい、事実としてはこの台詞はテリー=レノックスによるものです。
ですが、テリーがこの台詞を言うっていうことこそ、最悪のネタバレではないでしょうか?
テリーはかなり序盤で自殺したことになり、それより以前には「ギムレットには早すぎる」を言ってません。
となると、どっかでこのセリフをテリーが言うためには、ラストぎりぎりで判明する「実はテリーは生きていた」ことが事前に分かってしまうことになります。
そこで、「ギムレットには早すぎる」をマーロウの台詞だったということにしてみるとどうでしょうか。
あえてマーロウの台詞とするわけ
テリーは序盤で死んだことになりますが、その死にはナゾがつきまといます。
彼は殺人を犯した末に自殺したと思われているが、実は違うのではないか。
テリーが死の直前に残した手紙には、お別れにギムレットを、と書いてありました。
けれどもマーロウはこう言うらしい、「ギムレットには早すぎる」。
お別れは、事実を明らかにしてからだ。そんな決意を込めて、マーロウはテリーとの友情のため奮闘するんだろう、みたいな。
そんな情熱的な展開を期待しつつ読み進められるんじゃないかと。
最終的にはこれはマーロウの台詞じゃなかったと分かるわけですけど、別にいいじゃないっすか(^ー^;
ネタバレ食らうよりは作品に没頭出来るはずです。
これは作品に対する愛ゆえの嘘といっていいと思います。
作品に関して
最後に言っておきますが僕にとってこの小説は高度過ぎます。
カリフォルニアのハイソサイエティな美男美女たちの駆け引きはニート経験ありのコミュ障な僕には高度過ぎますし、意味ありげな文言で締められる各チャプターのラストはほとんど意味不明なものばかりでした(そしてそういったものに限って名言として褒め称えられているように思います)。
ただ、僕は事前に「ギムレット」の発言者についてのネタバレを食らったせいで大変がっかりしたので、この記事を書いてみました。
他にも記事を一件書いてますので、良かったらご参考に。