一番簡単なアミノ酸は、グリシンじゃなくてカルバミン酸・・・ということに気付くことで、多少なりとも生化学が見通しよくなるという話。
生体内でのカルバミン酸
カルバミン酸はアンモニアと二酸化炭素がくっついただけという構造をしています。
この一番簡単なアミノ酸ともいえる構造を持つカルバミン酸、非常に不安定なためこのままでは存在しないようです。
確かに、水溶液中でこの分子はアミノ基がプロトン化されカルボキシ基は脱プロトン化しているでしょうから、脱炭酸して残るのがアンモニアそのもので安定なのですぐにアンモニアと二酸化炭素に分解されそうです。
ところで、アンモニアも二酸化炭素も生体内ではありふれたものですので、これらの分子が関わる代謝経路にカルバミン酸が絡んでくる可能性があります。
そして実際、生化学でカルバミン酸化合物が出てくるのは、アンモニアの排泄経路であるオルニチン回路。
アンモニアをトラップした直後に生成するのがカルバモイルリン酸。
今の所、僕がやった生化学で確認出来たカルバミン酸化合物はこいつのみ(ちなみに、これは酸どうしが脱水して生成するものですから、分類としてエステルではなくて酸無水物)。
そして、あの超覚えにくいオルニチン回路の登場キャラはカルバミン酸を抑えるだけで結構簡単に覚えられるようになります。
オルニチン回路の鬱陶しさ解消
オルニチン回路が嫌なのは、登場キャラがほぼ知らない分子だらけだという点です。
かろうじて名前の分かるアスパラギン酸、アルギニンといったタンパク質を構成するアミノ酸勢もいるにはいます。
が、アスパラギン酸はともかくアルギニンの構造のややこしさはトリプトファン、ヒスチジンと並んでアミノ酸のなかでもトップクラスです。
δ位なんて微妙に離れたところ(リシンのε位ともちがう)に、グアニジンなんて馴染みの薄い官能基をぶらさげているという難敵です。
アミノ酸のなかでこれが好きなんて人はまずいないと思われます。
そして、鍵を握る2分子、オルニチンとシトルリンはどちらも構造と無関係の名前を持っていて、どっちがどっちかしょっちゅう混乱します。
でも、これからは大丈夫!
カルバミン酸を、知ったおかげです(^ー^)
オルニチン回路に出てくる、超イヤな登場キャラは、ほとんどがカルバミン酸との関連で認識することが可能です。
最初のカルバモイルリン酸だけではありません。
シトルリンは、カルバミン酸とオルニチンによるアミドです(こういうのもペプチドっていうのかは分かりません(^ー^;)。
で、アルギニンはシトルリンのカルバミン酸部分の酸素が窒素に置き換わったものです。
というように、カルバミン酸さえ味方にしちゃえば、あとは芋づるです。
逆に言えば、カルバミン酸がよく知らない分子だった、というのがオルニチン回路を分かりづらくしていたのかもしれません。