偽Perfume

一番単純なアミノ酸はグリシンではなく、カルバミン酸

理論上は、一番単純なアミノ酸はグリシンではありません。

理屈の上でカルバミン酸の存在を推測

エッセンシャル化学辞典という辞書によると、アミノ酸の定義は「アミノ基とカルボキシ基を同一分子内にもつ有機化合物」ということ。

であれば。

一番単純なアミノ酸がグリシンであるはずがありません。

間に入っている-CH2-を取り除いたものが、理屈上は一番単純なアミノ酸ということになりますよね・・・

名前としては、「アミノギ酸」かな?と思って辞書を引くも、そんな項目はなく・・・ググってみたら引っかかるカルバミン酸というものがどうやらそれらしいと判明します。

これこそが、正真正銘の最も単純なアミノ酸に違いありません。

生化学を通年で修得した僕でも、この名前には覚えがありませんでした。
それもそのはず、エッセンシャル化学辞典によると、カルバミン酸はそのままではすぐに分解されてしまって塩類やエステル類としてしか存在が確認されていないようです。

カルバミン酸をアミノ酸に含めないわけ

ところで、あまり馴染みのないカルバミン酸、構造としてはこんなに分かりやすいアミノ酸はありません。

導入でこんなのがあると教えてくれてもいいのに、僕が持っている生化学の教科書ではカルバミン酸については一言も触れていませんでした。

分かりやすいのにスルーされているわけは、いわゆるアミノ酸であるαーアミノ酸が持つ性質を全然確かめられないからだと思います。

塩基と酸、両方の性質を持つ両性電解質で等電点があるとか、ニンヒドリン反応で検出出来るとか、そういった性質はカルバミン酸が単独で存在出来ない以上確かめようがありません。

また、遺伝子にコードされているアミノ酸から簡単に誘導することもできなさそうなので、タンパク質を構成することもないと思われます。

僕が持ってる生化学の教科書にはα以外のアミノ酸(パントテン酸を構成するβアラニンや抑制性神経伝達物質GABAなど)も紹介されていますが、カルバミン酸は出て来ないので、実際あまり見ることのないものなのかもしれません。

というわけで、想像した物質が実際存在して面白かった、くらいでこの話を終わらせようと思ったのですが・・・

辞典に書いてあった、塩やエステルとしては存在する、という記述が気になってさらに調べてみたところ、実は生体内でもエステルなら普通に見られる(正しくはエステルじゃなくて酸無水物)し、さらには薬としても重要なグループを構成しているということが分かりました。

なので、カルバミン酸を巡る冒険はもうちょっと続けてみる価値がありそうです。

つづく。

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