偽Perfume

『メノン』"想起"を考える①想起説とは

かしゆかファンなら日頃よくあることですが、不意にかしゆかに蹴飛ばされたくなった日のこと。

いじわるなベイビー

その日の気分は「いじわるなハロー」だったので、ぐるんぐるんDVDを見ようとしたところ、息子がトミカDVDを見たいと言い出したので、お預けを食らいました(^ー^;

息子はこうなるとしばらく釘付けなので、僕は手持ちぶさたになって、しょうがないので哲学でもしてみようということに。

今日のお題は・・・ずっと前から気になっていたプラトンの「想起説」。

それも、『メノン』に出てくるのだけを対象にしたいです。

というのも、『メノン』の「想起説」は文言通りには受け取れないトリッキーな記述がされているように常々思われたからです。

というわけで、息子がトミカを見終わるまでの冒険が始まりました。

想起説の背景

「想起説」は『メノン』に出てくるソクラテスが提唱するものですが、これが出て来たのは”意識高い系”のメノンくんが探求のパラドックスを提示したためです。

ソクラテスは、メノンくんがしてきた質問に対して「正直僕は良く分からんのだよね、だからきみと一緒に探求したいんだ」と言いました。

手軽に効率よく答えだけを知りたかったメノンくんは、それに対してこんな風に攻撃します。

それが何であるかがあなたにぜんぜんわかっていないとしたら、どうやってそれを探求するおつもりですか?
(中略)
幸いにしてあなたがそれをさぐり当てたとしても、それだということがどうしてあなたにわかるのでしょうかーーーもともとあなたはそれを知らなかったはずなのに。
(藤澤令夫訳、プラトン著『メノン』より。以下全て同書より引用)

さすが意識高い系、自分の頭で考えるなんていう発想はなく、分からないことは分かっている人に聞いて済まそうという考えですが、そうするべき根拠を論理的に説明しています。

分からない人間どうしで話し合うなんて無意味だというわけです。

そこまで極論を言わずとも、効率的な学びを重んじる会社勤めの人間なんかも基本的にはこの発想に基づいているように思われます。

スマホでちゃちゃっと調べ物、なんてのもこの発想の延長でしょう。

とかく時間に追われる現代社会ではやむを得ない面もあるとは思いますが、なんでもかんでも教えてもらおうという発想では人類の発展(特に新規の科学的発見)なんてありえなくなってしまいます。

さて、そこでソクラテスを使ってプラトンは反撃に出ます。それが想起説です。

なので想起説は「分からないことを、分からない人間が探求すること、及びその結果として正解にたどり着くことは可能」であることを示すのがその目的としてあります。

「想起説」がどんな内容であったとしても、これまでの科学技術の発展を見る限りは、恐らくメノンくんよりプラトンの方が正しいはず・・・なんて予測しながら想起説を見てみます。

分かる=思い出す

よりによって、想起説のベースとなるのは宗教的な発想です。

が、その内容は恐らく真理なはずなので慎重に見てみます。

魂は不死なるものであり、すでにいくたびとなく生まれかわってきたものであるから、(中略)いっさいのありとあらゆるものを見てきているのであるから、魂がすでに学んでしまっていないようなものは、何ひとつとしてないのである。

ソクラテスは神話や詩にある魂の不死を持ち出します。

魂が生まれかわる、というのは肉体が死んでも魂は滅びずにまた別の肉体に宿るということのようです。

仮に魂が不死なのであれば、魂はなんども人間の一生を繰り返しているのだから、およそ人間が学びうるすべてのことを学んでしまっている、というわけです。

そんな魂を持つ人間である僕らは、実は知らないことなど何一つないということになります。

いろいろの事柄についても、いやしくも以前に知っていたところのものである以上、魂がそれらのものを想い起こすことができるのは、何も不思議なことではない。
(中略)
探求するとか学ぶとかいうことは、じつは全体として、想起することにほからなない

想起説の説明は以上です。

まとめると、

前提:魂は不死
導き出される予想:魂は膨大な経験を持っており全ての知識を備えていて知らないことは何一つない
結論:分からないことは忘れているだけ、思い出せばいい

が、メノンくんは当然こんな珍説には納得がいかず実例を示してくれと言います。

実例以前に気になること

さて、それでソクラテスは想起説の実例を示すのですが・・・

ちょっと待てよと。この想起説、なるほどねと納得して次に読み進めることはできません。

息子はまだトミカDVDで盛り上がっていたので、次に記事を改めて『メノン』の想起説の問題点を考えてみます。

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