プラトンの『メノン』に出てくるソクラテスが信頼に足るかどうか、『メノン』に出てくるセリフだけで判定してみます。
その本が読む価値があるかどうか
僕がいくら『メノン』はすげえから未読なら是非に!と言ったところで、ただのPerfumeかしゆかファンの戯れ言にしか聞こえないことでしょう。
作者プラトンは世界史にも出てくる超有名人ですけど、如何せん時代が過去過ぎるので本当に読む意味があるのか疑問に思ったり、もっと現代に近いアドラーだとかなんだとか話題の本を読んだ方がいいんじゃないかって意見もあるかと思います。
そこで僕はここで、『メノン』に出てくるソクラテスの発言は聞いてみる価値がありそうだということを、歴史的事実であるとか世界で評価を得ている偉い人による批評ではなく、まさに『メノン』に出てくるソクラテスの発言を引用することで示してみたいと思います。
形とは何か?
『メノン』でのソクラテスとメノンのやりとりのなかで、形とは何か?という問いが出て来ます。
まずはダメな回答例として、「円形」や「直線形」が挙げられます。
それらは形の一種であって、形そのものではないというわけです。
そこでソクラテスはこうメノンに聞きます。
「円形にも、直線形にも、その他およそ君が形と名づけるようなすべてのものに共通する同一のものは何であるか」
藤澤令夫訳『メノン』より
メノンくんはちょっと特徴のあるキャラなためにこの問いに自分では答えず、ソクラテスに答えてもらおうとします。
ソクラテスはそんなメノンくんに(たぶん)呆れつてやれやれなんて思いつつも、答えてくれます。
それがこんな答え。
形とは、もののなかでただひとつ、つねに色に随伴しているところのものである
藤澤令夫訳『メノン』より
これは意表を突く答えに見えます。
色?そんなの関係あるのか?みたいな。
メノンくんもこの答えには納得しなかったため、ソクラテスは別の言い方で「形」を定義するのですが・・・
2000年の時を超えて
ソクラテスが聞いているのは、具体的な実例としての「形」ではなく、概念としての「形」とは何かということだと思います。
そしてそれは、ソクラテスやプラトンのように紀元前に生きた古代の人にとってはとらえがたいものだったかもしれませんが、現代人にとってはむしろ簡単に手に入るものです。
なぜなら、辞書を引けばそこに書いてあるからです。
辞書に書いてある定義は、古代と現代の間にある2000年以上の時間の流れにおいて洗練された極地とも言っていいものでしょう。
なので誰かの言ってた定義なんかよりは信用に足るものと世間一般には思われています。
そこで僕は広辞苑で「形」を引いてみることにしました。
かたち【形・容】
感覚、特に視覚・触覚でとらえ得る、ものの有様(ただし色は除外)
い、色が出て来てるー!!!!
もちろん、広辞苑と一緒だからすごいとか正しいとか言うわけではありません。
言葉は生きているものですから、いつこの定義も刷新されるかわかりません。
ただ少なくともこの一例で、『メノン』でソクラテスの言っていることが仮に突拍子なく見えても、一考の価値はあるのだということは言えるのではないでしょうか。
偶然にしては出来すぎているこの2000年の時を超えたシンクロは驚異的です。
プラトンもそれを狙って、わざわざこんなことをソクラテスに言わせたんじゃないかなんて風にも思います。
まさか2000年以上先でも通用するとまでは思っていなかったかもしれませんが(^ー^;
というわけで、『メノン』は是非ともオススメなのです。