本日、推理小説レビューを2本書いたがそれはどちらも9月か10月に読んだ本で恐らくは出てすぐに購入して読破したものです。
それが、なんで今日まで記事にするのを待ったかといえばその直後に出会った途轍もない本のせい。
この本には『北の国で』という短編があって、それは米澤穂信『王とサーカス』のイントロが漂わせる透明感、夢遊感のある名品です。
しかし『王とサーカス』のように紹介記事を1本かけるかというとこれが難しい。
死にそうな老人が、兄に会うために北の国に行く。
そこで色々なことが起こるが、特に何の進展もなく話しは終わってしまう。
そんなんでありながら、この『北の国で』はなかなかに印象的でした。
老人に魅力があるわけではないのだが、頑なな主張を持っているところが人間味があっていい。
この人間味のあるキャラというのが、長い小説を読んでいて物語的展開が広がっていてもなかなか味わえないことが多いです。
そんなわけで、大した出来事の一つも起こらない短いこの短編に惹き付けられてしまった次第です。