ニキビ治療の外用剤にまた新しいチョイスが加わるようです(^ー^)
耐性菌ニキビにも有効の可能性
ニキビ治療の外用剤は処方箋でもらう薬としてはディフェリンゲルが主流になっていると聞きます。
これはお肌のピーリング的な作用によってニキビを治療するものです。
それより前に主流だったのは、抗生物質によりニキビの原因となる細菌を叩くクリンダマイシンゲルでしたが、こちらは未だ健在でディフェリンゲルとの併用も少なくないと思います。
この組合せによってニキビを無事撃退出来たという意見もちらほら聞きます。
僕が以前関わっていたOTCではニキビは治ったり治らなかったりがまちまちでしたので、これはすごく画期的なことだと思っていました。
今回ここに新たに加わる「ベピオゲル」も、処方箋なしで買えるOTCではなく、医師の処方箋が必要(受診しないともらえない)医療用医薬品です。
どうやらクリンダマイシンが効きにくい耐性菌によるニキビ(全体の30%くらいと推測されています)にも有効なようで、今まで苦い思いをされてきた方々には朗報となるかもしれません。
話題の新薬「BPO」でにきび治療はどう変わる:日経メディカル.
では何故、ベピオゲルは耐性菌にも有効なのでしょうか?
強力な酸化剤
ベピオゲルの有効成分は「過酸化ベンゾイル」です。
名前からして酸化力の強そうな物質です(^ー^;
構造は以下のとおりで、酸素原子どうしの結合が解離してラジカル形成するため強力な酸化剤として作用するようです。
“Benzoyl-peroxide” by User:Bryan Derksen – 投稿者自身による作品. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
反応性の強いラジカルなんかを間近で作られてしまったら、単細胞生物の細菌はたまったものではないと思われます。
人間は表皮にケラチン構造があるためある程度の防御は可能かと思いますが、それでも量が増えれば当然皮膚も障害されることでしょう。
こういうシンプルな攻撃には、細菌は弱いものです。
これまでのメインの抗生剤クリンダマイシンが作用するのはタンパク質合成を司るリボソームの50Sサブユニットです。
この場合、細菌は該当するタンパク質の変異体を作れば耐性を獲得できます。
変異体は不安定なRNAを遺伝子とする細菌では数多く作られるので、耐性は比較的得やすいと思われます。
一方、ラジカルはなんでもかんでも酸化して結合をぶっ壊していくと考えられます。
なんでもかんでも攻撃されたら、まぐれ当たりの変異体生成では対処のしようがないと思います。
過酸化ベンゾイルは欧米ではニキビに対して40年近い使用実績があるようですが、耐性菌の出現は一例も報告されていないそうです。
ゴキXXにママレモンや殺虫スプレーを使うよりも、まるめた新聞やスリッパで叩きつぶす方が確実に殺せるのとちょっと似ているかと思います。
妊娠・授乳中に禁忌でない
もう一つ注目すべき点として、ディフェリンゲルでは禁忌となっている妊娠・授乳中の使用が医師が有益性ありと判断した場合認められていることが挙げられます。
ディフェリンゲルを使用中に妊娠が分かった場合や、妊娠を希望する場合は使用を中断せざるをえませんでしたが、ベピオゲルの場合は使用継続が可能になるかもしれません。
妊娠中はホルモンバランスが不安定になることでニキビが増えることもあるようなので、選択肢が増えることは良いことだと好意的に受け止める医師の意見も出ています。
問題点は刺激性
ベピオゲルの有効成分は強力な酸化剤です。
強力な酸化剤と言えば、ハイターやカビキラーで有名な次亜塩素酸が思い出されることと思います。
どう考えても肌には良く無さそうですよね(^ー^;
やはり刺激性は強いようで、同じく肌への刺激性のあるディフェリンゲルとの併用で乾燥、発赤、ひりひりなどが高頻度で起こると報告されています。
もっともディフェリンゲルと同様その刺激は大抵は一時的なもので、保湿などによりある程度は対処出来るようですから、使用に際して医師・薬剤師にしっかり相談して話し合っておくことで回避可能な部分もあるかと思います。
やはり医療用である以上、独断で使用するのではなくてしっかりと専門家から情報提供をしてもらって、何かあればすぐに相談するように心がけることが大事です。
というわけで。
4月1日以降でしたらこういった新しい選択肢も利用できるようになるみたいですので、受診の際に相談してみるといいかもしれません。