テレビでやっていた映画「そして父になる」、僕は感動しました!
たったひとつの大事なこと
子どもの取り違えという想像を絶するような出来事を扱った衝撃の作品です。
以前から密かに興味はあったので妻と一緒にじっくりと鑑賞しました。
小学校手前まで育った状態で、取り違えがあったことが判明した子どもたちを巡る物語です。
その中でも特にフォーカスされているのはタイトルにもあるように「父」です。
特に主人公である福山雅治演じる、典型的な仕事人間型の男性が父になる瞬間を描こうとしていたと思います。
父になる・・・言葉にするほど単純なことではないでしょう。
が、この映画はたった一つの大事なことをその本質として捉えていました。
ネタバレになったらごめんなさい。
そのたった一つの大事なこととは、「自分の子どもを見ること」でした。
言葉にするとありふれていて単純に聞こえるかもしれません。
けれども自分のお腹を痛めたわけでもなく、仕事をすることが自分が家族にできる一番のことだという信念を持っている男性が、この映画が言うところの「父」へと変貌するところは涙なしには見られませんでした。
父になりにくい
よく父親は、母親に比べて子どもに対する情がうすいと言われます。
妊娠した苦労があるわけじゃないし、育児は母に任せっきり、子どもの方でも「パパ見知り」なんて時期があるとかないとか・・・
以前のように家庭での役割が完全に分業されていたのであれば、男は仕事だけをやって家庭にお金を注ぎ込むだけで許されたかも知れません。
けれども現代では子育ては両親だけですることも少なくないでしょう。
祖父母の協力が必ずしも得られるわけではありません。
また、家計を支えるのも父親だけとは限りません。
そうなってくると、より積極的に育児への参加が求められているのが現代の男性だと思います。
ところが社会的には男性の育児参加はまだまだしにくい状況だと思います。
僕のいる会社も、女性の育児休暇はありますが男性の育児休暇なんてありません。
職場にいる女性に比べて、僕を含めた男性社員は女性社員よりも緊急事態は少ないと思われている節もあるように感じます。
飲み会とかに参加しなかったり二次会を断ると男のくせにノリが悪い、ということを同僚の男性社員に言われたこともあります。
会社でそんな状況で、家に帰っても「仕事ばっかして」と嫁さんに怒られてぺこぺこしながら育児や家事に参加する男性が、子どもに正面から向き合うというのは、実はそんなに簡単では無いように思うのです。
映画での福山雅治の役では、ただの仕事人間なだけでなくて、実際に高給取りで立派なマンションにも住んでいる成功者としての男性を演じていました。
そんな役柄でも、父としては苦悩していました。
あらゆる複雑な問題はそのままでも
さて、映画では子どもの取り違えという衝撃的な問題を扱っていますが、その解決策が提示されるわけではありません。
やっぱりこの超難解な問題は、そう簡単に対処できるものではないのです。
この映画は広げた風呂敷をそのまんまにしているところが他にもあります。
たとえば途中で行き違いが顕著になってきた夫婦のすれ違いもその一つです。
でも、そんなことはさして重要でないと僕は思いました。
たった一つの大事なことを描くことが出来たのですから、その他の未解決問題なんて未解決のままで構わないと思うのです。
福山雅治は決して演技がうまいとも思いませんが、そのつたなさがかえって無器用な父親の姿を表現するのにマッチしていて面白かったと思います。
特に、ぎこちなく不自然な笑顔は「一つ屋根の下」では失敗してましたけど、本作ではむしろうまく符合していたと思います。
「そして父になる」、家族の問題で悩んだことのある人なら、きっと温かい気持ちになれる作品だと思います(うちも色々複雑なんですよ・・・(^-^;)。