応仁の乱の京都を舞台に、乱世を生きる人々を描いた「修羅」がかぐわしいほどに面白かったです(^-^)
有名な京都ジョーク
京都で有名なジョーク。
前の戦争、というと京都以外では太平洋戦争ですが、太平洋戦争でさほどダメージを受けなかった京都では「応仁の乱」が前の戦争だというのがあります。
応仁の乱は室町時代のことですので生き残りはいないはず(^-^;
それくらいに京都は平穏な歴史を送ってきた、みたいなジョークです。
ところが、その応仁の乱自体はそれこそ太平洋戦争の戦場さながらに壮絶なものだったようで、京都は壊滅してしまったと聞きます。
3度にわたって紹介した石川淳の「紫苑物語」レビュー、最後を飾るのは、そんな戦乱の時代を様々な立場から描いた傑作です。
事実関係をよく知らないので、歴史物語としてはどうなのか分かりませんが、エンターテインメントとしては間違いなく傑作で、現代でも余裕で通用します。
マンガ並みのテンポの良さ
まるでマンガを読んでいるかのような錯覚を覚えさせるくらいのテンポの良さがあります。
第一章では足軽のメインキャラが出てきます。
このうちの一人、大九郎は戦闘に長けるばかりか頭脳戦もいける切れ者なのですが、どうやら執心している姫がいるようで・・・
その姫が失踪したと聞いて、いてもたってもいられなくなります。
そして足軽達が死骸の散乱する戦場を後にすると、その死骸の1つからむくりと起き上がる人物が。
で、それがどうやら噂の姫だっていう。
で、姫もその場を足早に過ぎ去っていくっていう幕開けです。
このテンポなら映画化だってありでしょう!
日本一有名な坊さん登場
そして第二章は、一章の終盤でちょこっと登場した姫・胡摩がメインとなります。
そこで、日本で一番有名なお坊さんが登場します。
瀬戸内寂聴なんかめじゃないくらい遥かに有名な坊さんです。
室町時代の人とは知りませんでした・・・
そんな坊さんから、胡摩は啓示を受けて旅立ちます。
やはりテンポの良さが際立つ第二章なのですが、感想をひとことでいうなら「おっぱい」となります。
紳士を目指す僕はその理由までは明かせません。
美少女、魔王となる
続く第三章では、胡摩は魔王となり京都殲滅を見据えます。
まるでアニメでしょう、この展開力(^-^)
魔王となる過程がまた格好良くて、日本人は強い女の子が出てくる物語が好きなのかなーと思いました。
海外だと強い女って言うと男勝りな感じのタイプが多いと思うのですが、日本だと女の子らしさそのままに何故か能力だけ図抜けているみたいなタイプが多いと思います。
胡摩もそのタイプで、武家出身という背景はあるものの、筋肉ムキムキで力でのし上がると言うのではなく、持って生まれたカリスマを武器にのし上がります。
桃華房を焼け
次の章では、ついに物語の中核を担う桃華房という書庫が出てきます。
元々は関白が持っていたものだったのですが、京都が戦地となったことで放置されてしまっている書庫です。
ここには上代以来の歴史書が眠っていて、厳重に守られていて容易には破れないようになっています。
胡摩たちはこの歴史書を焼き払ってしまおうと企てます。
一方、足軽たちもこの書庫に狙いをつけます。
それを見透かした貴族達は、足軽達を罠にはめて殲滅させようと狙って、様々な企みがこの書庫を巡って交錯します。
続きは小説で!
これ以上ネタバレ抜きに紹介するのもおっくうなので、続きは是非とも作品をお読みになってお楽しみください。
マンガみたいにすらすら読めて、しかも小説ならではの言葉の魅力も味わえます。
以上、収録3作全部を紹介した石川淳の「紫苑物語」。
極上美文と芸術の極みを見せつける「紫苑物語」、日本の宗教起源へと思索を巡らす「八幡縁起」、そして美少女礼賛を密かなスパイスに映画みたいなエンターテインメント性を備える「修羅」。
どれもそれぞれに特徴があって、舞台が現代ではないという共通項はあるものの飽きること無く楽しめる作品集でした。
石川淳がまだって方は、最初の入りにこの「紫苑物語」を手にとってみるのもいいかもしれません。
おすすめです!