貴志祐介の「天使の囀り」は、もう何を差し置いてもタイトルが素晴らしいです!中身には物足りなさはあるものの、このタイトルセンスは称賛せずにいられません。
天使の囀りとは(ネタバレあり)
今からネタバレしますが、早い段階で読めてしまうネタなので未読の方でもお読みいただいていいかな、と個人的には思います。
心地よいささやき声のような、幸福感のあるこの言葉については作中で次のように語られています。
「最初は、まず、羽ばたきの音が聞こえるんだよ。だんだんに周りに集まってくるような感じで。それから、今度は囀りが聞こえ出す。ほら、今!」
「私には、何も聞こえないわ」
(中略)
「それって、どんな音なの?小鳥が囀っているような音?」
「そうだなあ。よく、夕暮れ時なんかに、街路樹にとまった雀の大群が一斉にやかましく啼き立てることがあるじゃない?ちょっと、それに似てるよ。不思議と日没の頃に多いのも同じだしね」
「ピーピー、チーチー、啼き立てるような音?」
「ああ。でも、それだけじゃないんだ。もっと不思議な感じ。そこら中でぱちぱちと、線香花火みたいに弾けてるっていうか」
当初は幻聴の一種かのように語られるこの「天使の囀り」。
これが実は物理的な振動による音だと後ほど判明します。
どういうことかというと・・・
この謎の音、実は脳髄で寄生虫が蠢くことによって発生していたのです。
この寄生虫は次の宿主に移るために、乗り移った人間の精神を乗っ取って思い通りにしてしまいますが、その過程で抹消から中枢への移動を行い、音が出るという仕組みのようです。
よってこの「天使の囀り」は、そのポジティブな言葉とは裏腹に実は死の宣告。っていう。
どうでしょうか、「天使」なんていう言葉のイメージと真逆の真意が込められたこのタイトル、皮肉たっぷりで素晴らしいでしょう?!
長ったらしいストーリーは中だるみ感もあるものの、この破壊力抜群のタイトルに引っ張られて最後まで読んでしまいました。