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僕のゆかちゃん:グランドフィナーレ

Mステで見たのが利いたようです。
ほんとに気まぐれで時々しか出てきてくれない、僕の夢のなかのかしゆかストーリー。

前座のお買い物

デパートでよくある光景。
カップルで訪れて、女性だけ盛り上がり男性は蚊帳の外に出されたように、所在なさげに売り場と売り場の境目をうろついている・・・

夫婦で子どもが居る場合は子守を任されたお父さんなんて光景もわりとよく目にしてきた。

ああはなりたくない。そう思ってきた。

主体性を失った人生は嫌だ。否、厭だ。

「こら」

不意にかしゆかに小突かれた。

「悪人の顔してる」

かしゆかには嘘をつけない。はっきりと嫌悪の表情を浮かべていた。

「ごめん、また他人と比べてた」

僕はすぐに謝って反省した。

かしゆかに言われるまでもなく、他人の悪いところを探して優越感にひたるなど愚の骨頂だ。
そして何よりも大事なのは今はかしゆかと二人という事実だった。

僕たちがいたのは新宿でいうルミネみたいなところだった。
そこまで敷居の高くない服屋がたくさん並んでいた。

いくつか回っていくうちに気づいたことがあった。

どこに行っても朱色一色のワンピースやブラウスがあったのだ。

今年はこれが流行なのかなと聞くと、かしゆかはこれはサーモンピンクといって定番の色だと教えてくれた。

なるほど・・・また一つ賢くなった。
女性との買い物は果てしない発見の連続だった。

それにしても。

かしゆかが丈の短いショートパンツやミニスカートを全く怯まずに手に取り、体に当ててみて鏡の前に立つのはさすがだった。

時々店員が、お色違いもありますので、とか、よかったらご試着してみてください、なんて声をかけても気にすることなく気ままに買い物を楽しめるのも、場慣れしているというか、格の違いを見せつけて余りあった。

いらっしゃいませ。

どうぞご覧くださいませ。

店員は大抵その二つしか言っていなかった。

祭りの時間

「そろそろ時間じゃない?」

かしゆかは僕に時計を見て欲しそうに言った。
彼女は時計をしてなかったが、僕はしていたのだった。

「ちょうどいいくらいだね、行こうか」

バスで数分行った先には神社があって、今日は祭りの最終日だった。
御輿が通るために交通規制をしている大通りに沿ってたくさんの人が待機していた。

警察が拡声器で群衆に規制への協力と、節度を呼びかけていた。

「御輿って見たことある?」

僕たちは屋台の方に興味があったので御輿の通る大通りからは離れて動いていた。
かしゆかは、ここのは見たこと無いけど地元でなら見たし、小さいときには担いだこともあると教えてくれた。

僕たちは一緒にいか焼きを食べながら人混みをかき分けていたが、だんだん籠もる熱気に御輿への興味がつのり、せっかくだからということで御輿も見ることにした。

時間が来て、太鼓の音が辺りに響き渡った。
一発一発、ヘヴィなリズムがどすんどすんとこだました。

神輿現る

「そういえばライブまだ来てないんだよね」
いかを囓りながら、かしゆかが僕をにらんだ。

「え、あ、うん」
痛いところだった。

僕はPerfumeのライブに行ったことが無いばかりか、ファンクラブにすら入ってなかった。

僕が言葉に詰まってしどろもどろでいると、かしゆかは肘で僕を突っつきながら「興味ないの?」とかいってにやにやした。

その視線ときたら、まさにレーザービームに近い鋭さを持って僕に突き刺さってきた。

そこに御輿が現れた。

それにしても祭りってどうしてアウトローというか、紳助のお友達みたいというか、いかつい人が多いんだろう?

僕はかしゆかの傍を離れないよう気をつけた。

周りはみるみる人がごった返して、僕たちはほとんど密着に近い状態になった。
かしゆかはカメラを取り出し、御輿を撮影しようとしていた。

が、何枚か撮って「この熱気ばっかりはうまく収められないなぁ」と不満そうにカメラをしまった。

かしゆかの仲間たち

「Kashuuka!」
いきなり数メートル先から大声が聞こえた。

明らかに英語圏のその声の主は、野球帽をかぶったえらくがっしりした体型の男だった。
きれいにそり込んだ髭と、かなりルーズな服装が僕を警戒させたが、その顔を見て驚愕した。

リンプビズキットのフレッド・ダーストだった。

フレッドは僕たちの目の前まで来ると、陽気に挨拶して最初にかしゆかに、次に僕に握手した。

もう片方の手にはバットが握られていた。

ごつい手が温かく、普段マイクを握るその手の感触には重みがあった。

あ~ちゃんにもよろしく的なことを言って、フレッドはまた人混みへ消えていった。

「すんごい知り合いがいるんだね」

リンプと知り合いとか、どこかで絡む機会があったろうか?
が、かしゆかは特に気にも止めず。
「よく見るといろんな人が来てるね」
と、小さなあごをクイっと揚げてかしゆかはあたりを見渡した。

うん、可愛い。
が、その目線の先をみて僕はまたびっくりした。

向かいの高層マンションの屋上から、こちらを見下ろしている黒服の男。
あれは、ナインインチネイルズのトレント=レズナーに違いなかった。

目の光る黒い愛犬が横に控えていた。

トレントだとわかっていなければ、白昼に出会ってしまった幽霊の類みたいだ。

まさかトレントまで知り合いなのだろうか。
そういえば‥

kornのジョナサン=デイビスとも仲が良いという噂を聞いた気がした。たしかジョナサンにもらったというジャージをいつだか私服に着ていた気がした。

ぶっちゃけあっち系、結構苦手だったなぁーなんてことを思い出し、そんな僕の苦手な人たちと仲のよさげなかしゆかが、ちょっと遠くに感じられたのだった。

おいしい展開

ふと、会話の最中にかしゆかの顔を見た。

左の唇下に、醤油らしき跡がのこっていた。
さっき食べたイカに付いてたやつだろう。

僕は笑って、かしゆかにそれを教えてやった。
かしゆかは慌ててそれをティッシュで拭き取り、同時に僕を見て吹き出した。
つんつん、と僕の顎の辺りを突っついた。

「しょうゆ付いてる!」

かしゆかは大笑いして僕についていた醤油あとも拭き取ってくれた。

こんなにおいしいレシピ、いや、おいしい展開は初めてだった。

あ〜ちゃん登場

御輿は今まさに続けざまに大通りを闊歩し始めていたのだが、あまりに人が増えすぎて身動きが取れなくなりそうだったので僕たちは祭りの場を去ることにした。

出店も見れたし、御輿も見られたから大満足だ。

人の流れに逆流して人混みをかき分けていると、途中であ~ちゃんとすれ違った。
あ~ちゃんは僕たちをみると嬉しそうに顔をほころばせて両手で手を振ってくれた。

かしゆかは、これからもっと混みそうだから気をつけた方がいいってことと、イカはおいしかったことをアドバイスしていた。

すれ違ったあとで、「フレッドの挨拶伝えるの忘れた」と言っていたが、もうあ〜ちゃんは見えなくなっていた。

宴の後

あ~ちゃんとすれ違って数分後、僕たちは人混みを脱した。

僕たちは近くにある駅前のドラッグストアに入った。
デザイナーズマンションみたいなコンクリート打ちっ放しの洗練された店内で、僕は思わずきょろきょろしてしまったがかしゆかは目的を達すべく無駄なく動いた。

まず、ラップを物色。
サランラップは分厚いからクレラップの方が好きで、PBは逆に薄すぎて使いにくいんだとかいうことを教えてくれた。

続いて消毒用のアルコールジェルを求めた。
ペットとふれ合う前後に使うらしい。僕もハムスターを飼い始めたからちょうどいいと思って買うことにした。

僕がハムスターについて話すと、かしゆかはかなり食いついてきた。
僕はうれしくなって、そいつはジャンガリアンで、色は白で、チップを厚めに入れてやったらしょっちゅう潜って出てこなくなったってことを写メを見せながら話した。

写メをのぞき込むとき顔がめっちゃ近づいてきて心臓が止まりそうになった。

僕はドラッグストアでバイトしているから、薬のことはちょっと詳しいと話した。

「じゃあ質問!よく効く胃薬ってなに?」

最初の質問がそれ?と僕は笑った。
まるでサラリーマンみたいだ‥でも、激務なのはサラリーマンと変わらないか。

「症状がどんなかで違うんだけど、
痛みがあるくらいきついなら、ガスターだね。
圧倒的に一番よく効くよ。
あとはね、お肉とかでもたれてるなら、胆汁を補うキャベジンとか熊胆がいいし、胃粘膜を保護するセルベール、スクラートもいい。
飲み会とかの直後ですぐにスーッとしたいなら、液剤が冷ケースに置いてあると思うから、それがいいよ。コストパフォーマンスは良くないけど」

かしゆかは大層感心しながら聞いてくれた。
すごい、とも言ってくれた。

自分の買い物はあるかと聞かれ、僕は髭剃りを見させてもらった。
僕の肌は非常に弱々しく、最近出たハイドロとかいうのが気になっていた。

かしゆかは、買うなら一緒にレジ持ってくよ、と言ってくれたがなんだかんだ僕は今使ってる電気カミソリの方が安上がりだということで何も買わなかった。

バドガール

ドラッグストアを出ると、祭りで盛り上がって奇声を挙げてる集団が居た。
かしゆかがそれを見て、「バドガールだ!」とそのうちの一人を指さした。

SEXYバドガールミニスカワンピース/バドワイザー/白ホワイト/ec38【Julius】

そこには、例のセクシーな衣装に身を包んだ女性がいた。が、よく見ると下にショーパン+茶色いタイツを穿いていた。

「いいんだよ、見て」
かしゆかはすぐそばでひそひそ声で言った。

僕は、見る必要はないと言い張ったのだが、その語気が強かったせいで必死な感じになってしまった。

かしゆかは
「いいって、無理しなくて」

とからかってきて、僕は反論すればするほど嘘っぽくなってしまうというドツボにはまってしまっていた。

かしゆかはテクテクと先に進むので、僕はなるべく喋らないようにして急いで後を追った。
バドガール達のキャーキャー大騒ぎする声が遠ざかっていった。

たのしい買い物

喧騒が遠のき、静かな並木道を僕たちは歩いていた。
人はまばらで、車道も時々車が走り抜ける程度だった。

かしゆかは相変わらずハムスターに興味津々で、
「触れ合いたい」と言ってきたから、僕は勿論オーケーだと言った。
(そこに深い意味があるとかではなく、もともとうちに来る予定だったところに理由をひとつ付け足した、みたいな感じだった)

で、せっかくだからかしゆかが晩ご飯作ってくれるって話になって、ちょうど通りがかったスーパーに入ることにした。

何を食べたいか聞かれた。

僕は即座に「そうめん!」と答えた。
かしゆかもちょうど素麺が食べたかったみたいで僕らは笑い合って、食材選びに取りかかった。

卵、ハム、胡瓜以外に何かいるかと(つゆ、海苔は家にあった)聞かれ、僕はどうしても大葉が欲しいということ、生姜もあったら最高だと言った。

緊急事態

一通りそろった頃、楽しい時間に水を差す緊急事態が発生した。
超猛烈にお腹が痛くなって、トイレに駆け込みたくなったのだ。
急に締め付けるような痛みだった。

そのスーパーにトイレは無さそうだった。
最初は違和感程度だったのが、徐々にギュンギュン腹痛が激しくなってせっかくかしゆかとの楽しい買い物も台無しになりかけていた。

しかも寄りによって、僕は緊急事態に突入したことをかしゆかに言えなかった。

ドラッグストアで薬に詳しいところを見せた手前、お腹を壊すところを見せられるか?
僕は、我慢して耐え抜くと決意したのだった。

かしゆかはどんどんご機嫌になっていって、朝ごはんも作ってあげよっかなーなんて言いながらパンコーナーへとカートを進めていった。

サンドイッチを作ってくれるとかで、パンやそこに乗せるものを物色していた。
僕は会計用に財布だけ渡して近隣のトイレに駆け込みたかった。

会計を終えた僕たちはスーパーを出た。

買い物袋を二つ、僕が両方持った。二人並んで並木道を歩いた。
お腹は悲鳴をあげ続け、何度か波が来ては去った。

僕は何とかそれを隠すことに成功した。

それにしても会話も会話でやばい方向に向かっていた。

僕は腹痛で会話どころでなかったのだけれど、例えば今冷蔵庫にプリンが入ってるんだけど、と切り出したとき。

「(ご飯のあとにはもう)入らんか?」と冗談めかして聞くと、
「はいらん?私が今排卵期かってこと?」

とかいう超刺激的な間違いをされたときにはさすがに頭が破裂しそうになった。

僕は冷静に「プリンの話にそんなことでてこないから!」と突っ込み、仮にそう聞こえたとしても真面目に答えようとしちゃダメだと言っておいた。

かしゆかの助け船

不意にかしゆかが電器屋に行きたいと言い出した。
これは福音だった。近くの電器屋といえばコジマ。あの規模のお店ならトイレがあるかもしれなかった。

コジマにつくと、かしゆかは「ゴールデンウィークにこんなとこ来る人なんて居ないって思ってたら意外にいるねー!」なんて笑ってた。

うん、すごく最高に可愛いんだけど、僕はそれどころではなかった。

店内に入るなり、トイレの表示が見えて僕は「トイレー!」と言った。
かしゆかは、「私も!」と言って、僕たちは各々お手洗いへと向かった。

急ぎ足で、個室に入った。
そこそこ綺麗だった。

隣の個室では、父親が子供を促す声が聞こえた。

僕は時計で時間を見て、何とか数分で済まそうと計画した。

かしゆかに待たれる幸せ

危機を脱しはしたものの・・まだお腹は痛かった。
しかしピークは去った感があった。

これ以上粘ろうと思ったら数十分はかかりそうだった。
時間にして、まだ4-5分。今なら何食わぬ顔で出られるだろう。

僕はしっかり手を洗ってトイレを出た。

出てすぐのところにあるベンチにかしゆかは座って待っていてくれた。
ビューティフルドリーマーで、最初にラムちゃんが登場するシーンにあったような、ポロロロロン♪という甘美な音色が聞こえてきた気がした。

自分を待っている人が居て、しかもその人がこんなにも可愛いという幸せ。

かしゆかは、僕が多少時間が掛かったことを何も問わなかった。

大丈夫?くらい言われるかと思ったが、ポイントカードあるのかとか、ここでどんなものを買ったのかとか、自然な会話をしてくれたおかげで僕は余計な釈明をする必要がなかった。

波も比較的収まり、僕は気持ち的にかなりラクになれた。

(´;ω;`)

僕はこんなふうに自分で手一杯だったから、電器屋に何しにきたのか全く考えていなかった。

かしゆかは照明やドライヤーを軽く見てから、「あったあった!」と言って目的のものがあるらしき売り場へとかけて行った。

そこは、電気ひげ剃り売り場だった。

かしゆかは、ひげ剃りを見たかったのだと言った。
僕がいつも首周りを赤くしているのを見ていたし、先程ドラッグストアでハイドロを物色していたのを見て、協力したくなったと。

ブワッとこみ上げてくるものがあった。

長く使うことになるだろうから、初期投資かかっても良いのを選ぼうね、と言ってくれた。

僕は「凄く嬉しい」と言ったっきり涙をこらえるのに必死で何もいえなかった。

選んだのは、フィリップスのカットする部分だけが独立した円盤型の最新モデルだった。
値段は2万ちょい。

「誕生日プレゼントね」とかしゆかは僕に言って、レジにその電動シェーバーを置いた。
僕は少し離れたところに立っていたのだけれど、少ししてかしゆかが「ポイントカードある?」とこちらを見て言った。

僕はカードをかしゆかに渡した。
レジの人がすぐにそれを取ってポイントを確認してくれた。

「100ポイントですので、100円割引できますよ。」

それを聞くとかしゆかは笑って、「ごめんなさい、またにします」と言って頭を下げた。
かしゆかは「ごめん、手持ち無くって」とハルヒのごめんねみたいにして謝った。

誕生日までには間に合わすから、今度ね、と申し訳なさそうに言った。

はんぶんこ

電器屋を後にした僕たちは、家まで歩くことになった。

時々来る腹痛が徐々にトイレ前の勢力を取り戻しつつあり、心なしか息が切れ切れになった。

「さすがに悪いよ」

かしゆかは、僕が荷物を二つ持っているから疲労したと勘違いしたようで、僕が両手に持ってるスーパー袋の一つを、半分持った(二つある取っ手の片方を持ってくれた)。

かしゆかが半分持ってくれた方の袋が、半分以下の重さに感じられた。
僕たちは、買い物袋を介して繋がっていた。

会話はとぎれとぎれになったけれど、何も不自然ではないし気まずくもなかった。

暗い夜道がこんなに楽しいなんて知らなかった。

Sprtite

「炭酸欲しくない?」
そろそろ家だというところで、かしゆかが急に言い出した。

確かに楽しい食事のためには飲み物選びも必要だ。

「うちの近くに100円の自販機があるから、そこ行こう」
僕はそう提案して、ちょっと道をそれた。

自販機に着くまでの間、セブンアップにはライムが入っているかどうかを話し合った。

僕は、何かしらそっち系は入っていると思うがライムではないのでは、と言って、かしゆかはライムの気がすると言って聞かなかった。

100円自販機の近くはトラックの駐車場になっていてあまりガラが良くない。
こんなにセクシーな女性を連れて歩いていたら、変な人に絡まれるかもしれなかった。

もっとも、フレッド=ダーストやジョナサン=デイビスとすら交流のあるかしゆかがそこらのヤンキーごときに怯むわけもないだろう。

幸いに僕達がそこにたどり着いたとき、他には誰も居なかった。

「今の気分はスプライトかなぁ」
かしゆかはやっぱり炭酸希望らしかった。僕はカルピスソーダを望んだ。

ラッキーなことに、その自販機にはスプライトもカルピスソーダもあった。

ところが、そのスプライトが妙なデザインになっていた。モスグリーンのモノトーンで、昭和なフォントで「SPRITE」とだけ書かれていた。

これはホントにスプライトなのか?!と二人で笑いあった。

僕はカルピスソーダと並んだカルピスウォーターを見てるとむしろそっちが飲みたくなって、「やっぱウォーターにする!」と言って小銭入れを出そうとした。

かしゆかは、いつ出したのか僕が財布を出すより先にコインを自販機に入れて、「お邪魔するのにおみやげとかないし、これくらい出すよ」といって、僕の分まで出してくれた。

結局かしゆかは謎のデザインのスプライトを買って、僕たちは家に向かった。

栄光の廊下よ

ドアの前に立ってカギを出す間、かしゆかは「あ~早くそうめんが食べたい!食べたいよね!」と足踏みした。
もう、何でもかんでも可愛いんだから・・と熱い気持ちになりつつ、僕は急いでドアを開けた。

栄光の廊下が見えた。
トイレまでの道のりは本当に輝いて見えた。

かしゆかに手伝ってもらってた荷物を僕が持って、ひとまずキッチンに全て運んだ。
特に卵に注意して、冷蔵するものは全て冷蔵庫に入れた。

かしゆかに適当な場所に荷物を置いてもらい、キッチンを簡単に案内した。

「さーがんばるぞっ」とかしゆかは腕まくりして、僕に待っててくれと言った。

僕は、着替えたりトイレ行ったりしてるわ、と素っ気なく言ってキッチンを出た。

失敗なくここまで辿りつけた…あとは、そうめんを味わい楽しい談笑に花咲かせ、ハムスターと盛り上がれる。

僕は悠々とトイレに入った。
はやく用を済ませてしまおう….いや、今のままではダメだ。
ちゃんと起きてトイレに行かないと…

僕はここで、完全に覚醒した。

小休止

そして、泣きながら寝床からトイレに駆け込みました。
夢から覚めた悲しさに比べたら、刺すようなお腹の痛みなんて、全くなんの苦痛でも無くてむしろお腹にばかやろうと言ってやったくらいです。

眠気を取りたくなくて、僕は意識して便座の上で寝てしまおうとしました。

出すものを出してしまうとお腹の痛みは完全になくなり、本当にそのままトイレで寝てしまえそうでした。

帰還

でもそのまま寝たら、ガクッと倒れて大惨事になりかねません。

僕はトイレを済ませて寝床に戻りうつらうつらして、何とか二度寝をしようとしました。
そしてまさかの夢再現が起こり、僕は再びかしゆかと一緒に帰ってきた家に戻ることが出来たのです。

————————

キッチンの奥は見えなかったが、料理の音が聞こえたのでかしゆかは確かにいるらしかった。
僕は食卓に着いて彼女を待つことにした。

戻ってはきたものの、先ほどの幸せに満ちたムードがちょっと違う。
一度離脱したせいか空間がすぐにでも消え去ってしまいそうな不安定さが漂っていた。

僕は必死にテーブルの感触とキッチンから聞こえる水回りの音を感じ取り、場が崩壊しないよう細心の注意を払った。
キッチンにいるかしゆかは今にも消えてしまいそうな気がした。

素麺だからさして時間はかかるまい、もう少し頑張ればまた楽しい時間が帰ってくる・・・そう思って待っていると、いつの間にか席のとなりにのっちが座っていた。

のっち再登場

「あのとき以来?」
のっちは何かの缶ジュースを飲んでいた。

のっちは今にも空間を崩壊させて夢を終わりにしてしまいそうだった。

僕は何とかこちらから話題を繋ぐよう努めた。

「素麺がそろそろできるよ、のっちも一緒に食べよう」

しかしのっちはぴしゃりと言った。

「出来ないよ。今時間をループさせているから。」

僕は愕然とした。そういえば素麺にしては時間がかかりすぎている。

流しの音は途絶えなかったがもはやキッチンに人の存在感は無かった。
隣ののっちも、姿が薄まりつつある気がした。

「手短に言うからちゃんと聞いてね」
のっちは確かめるようににっこり微笑んだ。

「かしゆかがね、ブラジルで面白いことがあったって教えてくれて」

「ハッキング防御されてダイムサンダ返された、あんなの初めてって」

そう、たしかブラジルで、そんなことがあった。

「それでね、思ったんだけど。」

のっちは微笑んでいたが、目は笑っていない。

「そのとき、かしゆかに接続した?」

僕は返答に詰まった。

のっちはため息をついて、うつむいた。

「やっぱりね。かしゆかの一部を盗んだでしょ」

神に誓って、そんなことはしていない、と言いたかった。

しかし、僕は気づいていた。

今日のかしゆかは、どこか変だった。

それも、僕に都合のいいように、変だった。

黙り続ける僕を見て、のっちは切り出した。

「返してもらうだけじゃ済まないよ」

ノブナガが勝手なことを言ったときのマチみたいに、のっちはビリビリと殺気を放っていた。

nobumachi

僕は焦った。

しかし、かしゆかを傷つけないためにも、そして彼女への心からの敬意ゆえに、のっちの言いなりになるわけにはいかなかった。

「キッチンにいたのは、かしゆかのクローンではないよ。」

のっちはじっと僕を見据えたままだった。僕は続けた。

「あれは、僕のクローンだ。」

のっちは黙ったままだったが、明らかに殺気が抜けたのがわかった。

そしてまた、存在が一層希薄になった。

もはやそれは光り輝くオーラを放つ美女ではなく、まさしく僕の分身だった。

まとめ

と、いうわけで。

二度寝なんてするもんじゃない。最高の夢が無残にも寂しいものへとなってしまいました。

僕のゆかちゃんシリーズは今回で最後にします。

結構ショックだったので。

さようなら、僕のゆかちゃん!せめて今日ばかりは踊りませう。

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