数ヶ月前にゲットしたKindleペーパーホワイトで最初に読んだ小説、それが貴志祐介の『黒い家』です。
怖いというか腹が立つ
この小説のテーマは社会に紛れ込んだ「悪」及び「痛みが及ぼす恐怖」です。
直接的なスプラッタ描写はありませんが、間接的な描写はあります。
明らかにひどい目にあったであろう、事後の様子が語られます。
これが、非常に痛い。
この小説のタチが悪いのは、それが日常に紛れ込む可能性のある出来事として描かれている点です。
加害者も被害者も社会を構成する一員であり、それぞれの日常があることを前提として悲劇が描かれます。
ある意味で胸くその悪さでは、そこいらのスプラッタのさらに上を行くかもしれません(とはいえ、スプラッタの小説なんて綾辻行人の殺人鬼シリーズくらいしか知らないですけどね!)。
あらすじで侮るな
ウィキペディアの紹介記事を一部引用します。
大手生命保険会社「昭和生命」の京都支社で保険金の査定業務を担当する主人公・若槻慎二は、保険加入者である菰田重徳からの呼び出しにより菰田家を訪問するが、そこで菰田家の子供が首を吊った状態で死亡しているのを発見してしまう。
事件の疑いが濃厚な事案であったことに加え、菰田家には以前にも自傷とも疑われる不可解な保険金請求があったことから、昭和生命は保険金の支払いを保留していたが、重徳は執拗に支払いを求める。疑念を抱いた若槻は、一連の事件の首謀者を重徳と推測し、妻の幸子宛に注意を促す匿名の手紙を送ってしまう。
そこから、若槻自身の生命が脅かされる、恐怖の日々が始まった。
で、僕はこの記事を読んで思いました。
手紙を送ったくらいで生命が脅かされる日々なんてはじまらんだろ…常識的に考えて。と。
結論から言えば、半端ない「恐怖の日々」がマジで描かれていました。
こんなんねーよとは言い切れないどころか、今もどこかでこのような物語が進行しているのでは…と思われて暗澹きわまりない思いを味わいました。
エンタメとしては極上
そんなイヤな小説なんですけど、それだけ迫真に迫った描写がなされているということで、読み物としての吸引力は相当のものでした。
なので、エンターテインメントとしてホラーを楽しむのであれば、これはかなり上級なものなのだと思います。
二度と読みたくないですけど(^ー^;