エレクトロ・ワールドの歌詞が扱うモチーフは、ずばり「最後の瞬間」だと思います。
世界も自分もいなくなる
この歌では、仮想世界に住む人間が目撃する、世界の崩壊が歌われています。
自分の居場所はその仮想世界だけ、という前提があるようです。
普通仮想世界を想定する場合、それの対としての基底現実が設定されて実在は基底現実にあるものだと思います。
しかしこの歌では、基底現実では生きられない、仮想世界でしか存在できない存在(アンドロイド的な機械かなにか)が主人公のようです。
仮想世界でしか存在意義がないはずの存在でありながら、面白いことになぜか人間くさい感情というか情緒を持っているのがポイントです(ここがドモチェフスキーっぽい)。
オーガニックな歌詞
近未来をモチーフにしていながら、ほとんどのフレーズがオーガニックで人間的な表現を用いているのが第一の注目ポイントでしょう。
例えば「地図」が出てくるところ。
地図を片手に旅するなんて、とっても人間的でぬくもりあふれる所作です。
地図を間違って歌詞に使ったダメ歌詞がありましたが、こういう上級な使い方を見せてあげたい。
費用は全額当サイトで賄います。
ほかにもとても印象的な言葉が出てきます。
「手紙」です。
サイバーなキーワードと並んで出てくる「手紙」。
なんてオーガニックな手触り!!!
既に廃れつつある古き良き時代をにおわす言葉といっていい手紙は、あえて選ばれた言葉だと思います。
無機的でサイバーなキイワード
一方で、近未来の世界観で構築されたPVにも似つかわしい、無機的な言葉も同居しています。
特に決め手となる一箇所だけを引用します。
これが、超カッコいい(^-^)サウンド的にもノイズギターの入る聞き所です。
耳で聴くのも良いのですが一度歌詞カードの文字を目で見るとより良いと思います。
目につくのは”あ”の連発した箇所。特に、3連発がありますよね?
これ、歌詞カードでよく「あぁ・・・」とか「ah…」とか書かれている部分とは絶対に違います。
この「あ」の羅列は非人間的で温もりのない、機械の反応みたいな文字の羅列です。
2連発の「ああ」ならともかく、3連発の「あああ」を使う人間なんてそうそう見ないです。
この「あ」の連発が、先ほど示したようなオーガニックな(はい、オーガニックって言いたいだけです(^-^;)表現の多発する歌詞に埋め込まれることでマジックが起きています。
世界の崩壊とともに人格も崩壊していくさまを描く+その姿に悲しみや同情を感じさせてしまう。
というマジックです。
人間にとっての「自分の最後」は、もしかするとこんな感じなのかも・・・って。
ほかにもとても魅力的で面白い表現がありますが、決め手となっているのは今僕の引用した「あ」の不気味な連発だと思います。
震災などへのリンク
この歌で今回の震災や、もっと前にあった原爆投下などを思い起こすのもある意味当然です。
歌詞を読んでいると、原爆や震災で亡くなった方々がその死を目前にしたとき感じたであろう孤独を思わせて余りあるからです。
不可知であるはずの「自分の最後」を描いてみせることに成功している作品自体希有ですし、この歌には原爆や大震災を思わせるようなフレーズがちりばめられているのです。
三部作の一部という位置づけ
このようにエレクトロワールドはすさまじく挑戦的で斬新な手法を用いて、なかなか描くことの困難な「最後の瞬間」をリアリティを持たせて表現してしまっています。
また、もっと驚くべき事にはエレクトロワールドはPerfume初期三部作の最後の曲で、前に2曲あるということです。
他二曲も、エレクトロワールドと同様の近未来の仮想世界を扱っていて、最後に世界崩壊を持ってきたようです。
三部作ってwwww
しかもテーマは、人間の創造(=コンピューターシティ)と破壊(=エレクトロワールド)。
リニアモーターガールは舞台設定でしょうか?まだ詳しくは分かりません。
それにしてもなんという驚くべき創作意欲…
そしてそれを実現してしまう才能と、それについてきて全うしてみせるPerfumeの3人。
神々しいというのでしょうか、この奇跡のような配剤は。
アイドルってこんな風に壮大な物語を描いたりするもんでしたっけ?
「世界の崩壊」とか「自我の芽生え」とか「自分が消えゆく瞬間」なんかを歌うもんでしたっけ?
最高すぎるPerfume。
これから君たちには、ものすごく楽しませてもらえそうでワクワクしています。
試験勉強ブッチしてまで聴きまくってしまったが、全く悔い無し!(試験もちゃっかりクリアしましたけどね!)
そんなわけで、ファーストアルバム(なぜかベストw)を買っちゃったよね!
『エレクトロワールド』収録ですが、シングルがまた美しく若干テイクが異なるので両方買って損はないです。
Perfume 〜Complete Best〜 (DVD付)
PVでバックで世界が崩壊するなか直立するかしゆかのシーン。
まるでかしゆかが世界を滅ぼしているみたいで、ゾクゾクしちゃうw