本当は最高の『Spring of Life』になるはずだったのに、なんらかのトラブルで最高になり損ねたのが2012年紅白の『Spring of Life』でした。
Spring of Lifeの真髄
ここ1ー2ヶ月力説し続けているように、『Spring of Life』は怪物的傑作なのです。
それは「死と隣り合わせの生」を描写したところに真髄があり、その真髄を凝縮したのが、生命が本能として持つ再生機能を表した間奏部分であり、ライブでも一番感動する場面です。
リリース直後の武道館ライブでは、間奏で照明が落とされ、衣装につけられた自律性をもって明滅するライトによりこのコンセプトを完璧に表現していました。
キモは、強制終了させられたアンドロイドが生命の根源的本能により目覚め、そして助け合って立ち上がるところです。
とっておき
このとてつもなくおいしいシーンを、しかしこの年のPerfumeはテレビでほとんどやりませんでした。
ネットで確認した限り、この部分はカットされて演じていました。
唯一、紅白を除いて。
明らかにPerfumeは、紅白に備えてこの最強のシーンをとっておいたのだと思います。
あ〜ちゃん「DAMN.」
しかしその紅白で、Perfumeというか、中心のあ〜ちゃんを痛恨の不運が見舞います。
のっちとかしゆかに支えられて起き上がるのではなく、ワンテンポ遅れて自分で立ち上がるという風になってしまったのです。
Perfumeが犯してきた間違いの中で、これはもっとも悲痛なものに分類されると思います。
正直なところ、Perfumeがときどきミスをするのを見ても僕はそんなにガッカリしたりすることはありません。
でもこの『Spring of Life』でのミスはハッキリ言って残念でした。技術とコンセプトの素晴らしい融合の美しさが、その極みでポッキリと折れてしまったように思えたからです。
何よりも、この日のために大切にSpring of Lifeを温めてきたPerfumeが一番悔しかったろうと思います。
ところが、Perfumeにとっての最大の不運は、ミスをしてしまったことではありません。
一番の不幸は、NHKのカメラワークにあったと思います。
コンセプトを理解しないカメラ
せっかくの間奏シーンで、カメラは途中からPerfumeではない明後日の方向を映してしまっています。
これはストーリー展開を無視した、なんとなく全体的にすげえから映しとけみたいな消極的な印象を受けます。
Perfumeにミスがなくても、カメラワークのせいで結局はガッカリさせられていた可能性が高いです。
ミスも物語に変えるPerfume
さらには、このミスのシーンをよく見ていると気付くのですが・・・
かしゆかのっちは、タイミングをずらすことなく踊れているのです。
あ〜ちゃんが一人だけ遅れている、というように見えます。
しかしここは、三人が連動する場面ですので、あ〜ちゃんが遅れたら残りの二人も遅れるはずです。
ですから、この一瞬一瞬が刻々と変動する瞬間に、あ〜ちゃんは即座に二人に指示を出したのだと思います。
「すぐ追いつくから、先行って!」
と。
頭の回転が早いあ〜ちゃんの切れが冴え渡ったのが全てですが、しかしそれを信頼しきって全くズレずに先を行ったかしゆかとのっちもすごいです。
つまり、この緊急事態をPerfume三人はお互いの信頼関係と高度な連携プレーで乗り切ったのです。
結果、最大の見せ場となるはずだった「再生」のシーンは演じられなかったものの、全体として破綻させることなくSpring of Lifeをやりきることには成功しました。
一度見て終わりなのであれば、なんとなく物足りない気がしていたものの、見れば見るほどこのシーンは感動的になりました。
カメラが最初っからメンバーの表情を追うように映していたのなら、このような連携も映像としてすくい取れたかもしれません。
非常に惜しいところです。
やり返すPerfume
それにしても、こんな失敗があってもPerfumeは全く折れることなく、毎年毎年紅白では新しいことに挑戦していますね(^ー^;
むしろ、もっともっと失敗が許されない演出へと突き進んでいるように見えます。
このやられたらやり返す的な反骨精神こそが、Perfumeのコアなのかもしれません。