偽Perfume

意中の美女しか見ていなかったために、目の前にあった天国の入口を見逃してしまった彼

そしてそのせいで傷ついたかもしれない、可哀想な美女についての話です。

沈没した船を見つめる船長

あんまり交流ないのですがいわゆる意識高い系の人が身近にいます。

イケメンというよりは渋い方のビジュアルで年齢は僕より少し上くらい(30半ば?)、ちょっと薄毛でこだわりの強い人です。

そんな彼とすれ違ったときに、なんかすごく疲れて見えたので「お疲れさまです・・・なんか、すごく疲れてそうですね」とねぎらうつもりで声をかけました。

すると彼はちょっと聞いてよと言ってきました。
ちょうと小話聞くくらいの時間はあったので、どうしたんですか、と聞きました。

彼には好きな人がいたのですが、つい先日終了したそうです。

沈んでしまった自分の船を見つめるような目つきで、彼は詳しい内容を教えてくれました。

彼のことは、船長と呼ぶことにします。

羨望のまなざしあびる女剣士

船長は同僚のある女性に恋をしていたそうです。

彼女は30前後で仕事の出来るテキパキした人。
船長と同様に色々とライフハック的なことにも取り組んでいるようで何度もそれ系の話で盛り上がるうちに好きになったんだとか。

その女性は趣味が剣道ということで今でも定期的に道場に通っているとのことでしたので、女剣士と呼ぶことにします。

船長と女剣士は仕事以外ではほとんど交流はないのですが、仕事では一緒に動くこともあったようで、そういう時は息の合うコンビだったと船長は言っていました。

ちなみにこの女剣士。
僕も見たことだけはありました。

170㎝くらい身長があって、剣道のためかPerfume並みに姿勢がいい人です。

肩よりちょっと下まで伸びた髪の毛を勤務中は後頭部にくるりと巻いていました。

そしてキビキビした動きでしゃべりもドライな感じなので結構初対面だと威圧感があるのですが、時折見せる笑顔がすごく愛嬌があるというか人なつっこいので意外に親近感を感じやすい印象です。

彼女を慕っているという人なら、僕でも数人知っていました。

そんな女剣士と一緒に仕事をしたのなら、彼女が居なかったり独身だったりした場合、ほとんどの男性が恋をしてしまいそうです。

僕は見るからにデキるタイプの人は結構怖いというか苦手なので遠巻きにしか見ていませんでしたが、船長が女剣士を好きだったことを知っても特に驚かない、なるほどという印象でした。

船長出航

船長は綿密に人生設計をしているようですし、仕事への取り組み方もたいへん計画的。

そんな船長であっても、恋は盲目ということなのでしょうか?
いきなり踏み込んだ行動に出たようです。

ある日、明いているはずの日に女剣士を夕食に誘ったそうです。
メールで。

慎重派の僕なんかは、距離を縮めるには段階が必要ではなんて思ってしまいます。

一緒に仕事をしていたら、自然とランチやお茶くらい一緒にする機会ももてるはずですよね。

だから、そういうのを積み重ねていくうちに空気というかタイミングとかお互い読めるようになってからの方が、二人で夕食なんていう親密な会合はしない方がいいと考えます。

でも船長は、出航を選びました。

さあ、女剣士はどう返答したのでしょうか??

仲介者・茶畑のシンデレラ

女剣士はしばらくしてメールを返信してくれたそうです。

しかしそこには、船長の期待とは異なる返答が書かれていました。

「良かったら、〇〇さんも誘いませんか?」

おお、これは”かわし”というやつでしょう。
気が進まないけれど断るのも申し訳ない場合の逃げの一手に分類される手法と思われます。

ただ、完全拒否でない以上、そこまで悪くも思われていないのかもしれません。

ちなみに・・・

この〇〇さん、女剣士を慕っている人の一人でした。
彼女は静岡出身でお茶が大好きなので、茶畑のシンデレラと呼びます。

茶畑のシンデレラは、小柄で小顔な可愛らしい人です。

そして話し好きですごく面白い人です。

この人がいれば、まず場が沈黙することはありえないくらいに良く喋ってくれます。
自分が喋るだけじゃなくて聞きに回ったときは笑顔のまま頷きながら聞いてくれたりして、とてもスムーズに会話できる人です。

聞くところによると彼氏が出来てもわりと早期にうまくいかなくなって、恋愛的には色々苦戦しているようです(^-^;

たぶん、すごく楽しい人なので告白してくる男性は事欠かないのでしょう。
それで彼氏はすぐ出来るのだけれど、なまじすぐ出来てしまうために付き合いだしてから色々と合わない部分や譲れない部分で揉めてしまうようです。

僕が既婚者と知ったときの、羨ましそうに「私も早く幸せつかみたいですよー」なんて言っていたときの遠い目が忘れられません(^-^;

そんなわけで、茶畑のシンデレラを同伴させようという提案は、女剣士と二人で食事したかった船長にとってはともかく、第三者の僕からしたら結構おいしい流れに思えました。

女剣士とサシで飲むよりも、場は絶対に盛り上がります。
その場で告白まで考えたりしていたら別ですけど、入りとしてはむしろ茶畑のシンデレラが居てくれた方が会話は弾むし会社に戻ってからも話題が増えて良いことずくめではないでしょうか。

そして、美人タイプと美少女タイプの女性二人と一緒に夕食だなんて、すれ違う男子達からしたらもう羨ましすぎる光景となったに違いありません。

ドラクエで言うと、アモスがバーバラとミレーユを連れて歩いているようなものです。

考えれば考えるほど、これは喜んでいい展開な気がしました。

船長撃沈

僕は「すごいですね、それ。面白そう」と船長に言いました。

ですが船長の顔色は曇ったままです。

無言で首を振ってため息をついていました。

数秒の沈黙があったので、僕は慌ててなんとか言葉を繋ぎました。

「三人で食事には行ったんですか?」

「行くわけないだろ、あんな返しされて」

僕は展開がよく分からなかったので、とりあえず何と返信したのかと聞きました。

すると予想だにしなかった驚愕の答えが返ってきました。

「返信はしてない」

・・・

え?

僕は自分の耳を疑って、一応確認のために聞きました。

「〇〇さんも一緒にどうですかっていうメールにですか?」

猛烈に頷く船長。

え?????(^-^;

美女ふたりとの天国のような夜を、この人は自ら進んで放棄したようです。

僕は思わず吹き出してしまいそうになったのですが、それはあまりに失礼にあたると思って手で口をふさいで唖然としました。

「あんな返答されて、なんて言えっていうんだ」

船長はぼやきました。

僕は、色々思うところはあったものの、もはや「ですよね」としか言えなくなっていました。

自分から送ったメールの返信に答えないなんて、会社で顔を合わせなきゃいけない以上気まずくなったりして色々ライフハック的にも問題があると思うのですが・・・

恋は目を曇らせるというのは、本当ですね(^-^;

女剣士、その後

僕は普段女剣士と会うことはほとんどないので、良く会う機会がありそうな同僚にさりげに聞いてみました。

最近女剣士どう?みたいな感じで。

相変わらず忙しそうにしてるよ、とのことでした。

仕事とプライベートは割り切って動いている感じなのでしょうか?

たぶん、あまりいい気はしていないはずで、何か可哀想に思いました。

全然悪いことしていないのに、まるで何か悪さをしてしまったかのような気分になってしまっていたら・・・

船長はいいですよ。
僕みたいな下っ端を掴まえて被害者面で同情を求めることができるわけですから。

なかなか不条理な世の中です(^-^;

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です