偽Perfume

タイトル負け、伊坂幸太郎『魔王』

タイトルで選らんだ小説が完全にタイトル負けしてて、笑うに笑えぬ状況に(^-^;

魔王…刺激的なタイトル

だって、魔王ですよ?
超刺激的、何か起こりまくりそうな妄想をかきたてるタイトルじゃないですか。

試しにサンプルをダウンロードしてみると、一般社会人風の主人公が特殊能力を使うシーンが描かれていました。

まさか、こいつが魔王になるのか?!

かなりゾクゾクして興奮しつつ、本編を購入しました。

 期待外れな展開

ところが、いくら待っても主人公は魔王に覚醒しません。

代わりに魔王になりそうな人物が出てきますが、どうにも「魔王」というほどの威厳も恐ろしさも感じられません。

僕が魔王に夢見すぎなのでしょうか?

自分の中で魔王というと真っ先に浮かぶのはドラクエⅢのゾーマです。

なにゆえ もがき 生きるのか?
滅びこそ 我が喜び。
死にゆく者こそ 美しい。
さあ 我が腕の中で 息絶えるがよい!

これぞ、魔を統べるものの言葉です。
ゾーマと比べてしまうと、やってることも言葉もなんとも庶民的というか、ネット界隈で散見されるものを超えていなくてガッカリ感の募る展開でした。

どことなく牧歌的ですらある

前半が終わると、主人公がバトンタッチされるのですが、事態は進展したはずなのにどこか呑気というか、穏やかな感じがあってちっとも魔王のいる世界な感じがしません。

小さな幸せの中に生きる優しい一般人のちょっと不思議な体験、くらいのお話が語られ、そしてそのまま終わってしまいました。

結局最後まで読んでしまったので、なんだかんだで読ませる技術のある作家には違いないと思いますが…

タイトルに見合った、想像を絶するような魔王を描いてもらいたかったなあ、と「もっともっと」を期待してしまうような物足りなさがありました。

読むべきかといわれれば、魔王というタイトルに惹かれたなら微妙、そうでなくて何か読みたいくらいなら、別に悪くはないんじゃないの、といった感じです。

ちなみに、小説で魔王を描いたものとして優れた作品としてはクラーク=アシュトン=スミスの短編「暗黒の魔像」があります。
魔王っていうか、魔神でしょうか。
こちらはどういった場合においてもお勧めの傑作です。

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