魔界大冒険に引き続き鉄人兵団レビューをしようと思って、昨年公開された鉄人兵団のリメイクを先日見ました。
やはりコアをスルー
初見です。
いや~~~…
結構期待したのですが、結論からいうと魔界大冒険リメイク以上のガッカリでした。
よくもここまで、旧作の良かったところをスルー出来たもんだなと。
ストーリーの根幹となっていた「奴隷制」については完全に骨抜き状態でした。
そして新たに選ばれたテーマは、ロボットと人間の絆のようです。
しかし、これもなんだか腑に落ちない結果に終わっています。
これは浦沢直樹による鉄腕アトムのリメイク、「PLUTO」も犯したミスですが、ロボットの心、精神が存在する可能性を扱った作品でロボットを人間味豊かに描いたら本末転倒です。
性善説を、生まれながらの善人を例に説明したって胡散臭くなるだけなのと同じです。
人間なら誰だろうと、たとえ極悪人であっても、井戸の近くをよろよろと幼い子が歩いていたら「危ない!」と思ってしまう…ことがある。
だから、人間の本質は善なのでは?!
というように組み立てて初めて説得力のある説になるのではないでしょうか。
鉄人兵団のリメイクでは、もともと「ただの機械」として描かれていたはずのザンダクロス、ジュドがわけの分からん癒し系ゆるかわモテ愛されetc…キャラになってしまってます。
これじゃダメでしょう。
気高き兵器が見る影もありません。
更なる失敗点
しかもこいつ、偉そうにでしゃばってヒロインのリルルの影を薄くするという大罪まで犯します。
ジュドはもともと捨てられたロボットで、リルルがそれを拾って修理したなんていう、『PLUTO』に影響受けました的な裏話まで追加してしまっているという…
氷の目を持つ女であり、冷酷な笑顔を見せたあの恐ろしいリルルは何処へ…
あの機械のようなリルル(実際機械なんですけどw)が、しずかちゃんの予測不能な行動によって異常をきたす…コードされている思考回路が狂いだし、自分たちの”教典”に重大な間違いがある可能性に気付くという、超劇的な展開はどこへやら。
リメイクではリルルは実は元から良い奴だったぽいってふうになってしまってます(–;
アハハハ…
旧版が傑作すぎた?
というわけで、魔界大冒険に引き続き鉄人兵団も旧版の方が圧倒的に優れているというのが僕の見解です。
旧版の鉄人兵団は、もっと鉄人兵団がクールで冷徹な分、色々と考えさせられるテーマが盛り込まれています。
例えば、鉄人兵団の国メカトピアにおけるロボットどうしの奴隷制廃止と同時に起こった人間の奴隷化政策。
これ、我々が奴隷制を廃止したのと同時に機械を奴隷化したのだと言っているようにもとれます。
もっと掘り下げて、文明は宿命的に奴隷を必要とするなんてことも考えられるかもしれません。
この視点は、たぶん鉄腕アトムでも取り上げられていると僕は思います。
アトムは設定自体がずばり奴隷出身(サーカスに売られました)です。
そして、この視座が湧き起こす悲しい宿命を乗り越えるカギを、ドラえもんというシリーズ自体が握っているように思われます。
ドラえもんは機械でありながら明らかに友だちであり、奴隷ではないからです(そこいくとアトムはけっこー微妙ですよね)。
というわけで、旧版の鉄人兵団は現代人なら見ないわけに行かない、超重要作品だと思います!