電車に乗って、「走れ電車!」って思うときのイメージ。
行き先に早く着きたいというはやる気持ちだけでなく、自分のいた場所から早く立ち去りたいという思いがあるのかもしれない。
成功者Perfume
成功を掴んだPerfumeにとって、「過去」は懐かしさはあっても帰りたい場所ではないのでしょう。
だから高らかに、「走れ STAR TRAIN」と歌うことが出来る。
しかし、Perfumeを聴く側の僕にとっては、「過去」はああすりゃよかった、こうしとけばよかった、と思わずにいられない、帰れるものなら帰ってやり直しのしたい場です。
漫画のBANANA FISHで、誰かが「思い出と戦っても勝ち目はない」と言っていました。
30台も半ばに差し掛かって、その意味をしみじみと考えます。
何かにつけて過去は今を縛り付け振り回してきます。
自分に似た若い新人にあれこれ説教したくなるのとか、たまたま子ども時代に住んでいた高級住宅街近辺に居を構えたいと思っていることとかが僕を振り回す過去の一例です。
もっと今を大事にして生きられはしないものか、と思っても、過去は甘い誘惑でもって僕を拘束します。
こんな不自由な事態からは早く脱してしまいたい。
そう思い始めたときに、STAR TRAINが全く違った風に聞こえてきました。
勝ち目のない戦いに振り回されないために
成功したPerfumeだから後ろを振り返らずに「走れ STAR TRAIN」と歌える・・・というのはどうも僕の勘違いかもしれない。
Perfumeはもしかしたら、いや、たぶんかなりの確率でためらっているのです。
なぜなら、PerfumeはSTAR TRAINという空想の電車に向かって、「走れ」と祈るように歌っているからです。
自分の足は、止まってしまっているのかもしれません。
その場から動けない。むしろ、逃げ出しそうにすらなっている。
勝ち目のない思い出を振り切るように、切な願いを込めて歌うのが「走れ STAR TRAIN」であって、これは不安と恐怖の裏返しに違いないのです。
もちろん、STAR TRAINは空想の存在であって、実際に走るのはPerfumeたち自身です。
でもそこに空想の介在を必要とするのはPerfumeがためらいを少なからず持っている証だと思うのです。
歌詞を見直すと、周囲への宣言というよりは、自分を納得させるために言い聞かせているようにも読めます。
特に、英語の部分。
英語にしてよくある歌っぽくされてはいるものの、振り返りたい温かくて心地の良い諸々を振り切る決意を滲ませた凄まじく強烈な表現です。
Perfumeが何もいらないわけないし、音楽が全てってわけでもないはず。
でもそう思える瞬間が無くは無い、だから今のうちにとっとと電車よ走ってくれ、振り返りたい衝動を振り払うようにハイスピードで一直線に(『FLASH』)。
こんな風に感じました。
このように理解してみたせいか、今一番聴いてて嬉しくなるのがSTAR TRAINです。
これは是非ともライブで味わいたい一曲です。
STAR TRAIN (Album-mix)
Perfume
2016/04/06 ¥250