うちの母はコーヒー好きです。
母のコーヒー
小さい頃は全然飲ませてもらえなかったコーヒーですが、高校卒業してフラフラとニートってたときには良くコーヒーをいれてくれて、一緒に飲みました。
はじめのうちは、母のコーヒーの何がすごいのか、どこを楽しめばいいのか、さんざん熱弁されてもよく分かりませんでした。
確かに缶コーヒーより遙かに香りは際だっていたけれども、そもそもどうして母がそこまでコーヒーに入れ込んでるのかはサッパリ分かりません。
ココアの方がよっぽど熱中する価値のある飲み物に思われました。
きっかけは絶望
ところが、ある日突然僕はコーヒーのうまさを知ったのです。
その日からというもの、一杯一杯の味わいは別次元のものと変わり、飲む体験は貴いものへと変貌したのです。
当時何があったかもの凄くはしょって言いますが、人生に疲れていました(^-^;
自分の今後に絶望していました。
生きる喜びって何よってなって、それまで魅力のあったネットとか、音楽とか、いろんなものが急に無色透明に、何の興味も呼び起こさないものへと変わってしまったときのことです。
そんな時に、僕のそんな変化にお構いなく母が「新しいコーヒー買ったから一緒に飲むか」と誘ってきたのです。
ハワイアンコーヒー
呼ばれていくと、ちょうど豆を挽いているところでいい香りが漂っていました。
ハワイのコナコーヒーといって、母が一番好きな銘柄でした。
日本でも手に入るけれど、おいしいのを探すとちょっと難しいとのことでした。
僕の貧相な表現力では、コナコーヒーの奥行きについて到底再現出来ませんが…
確かに、一度飲んだら忘れられないかなり独特なコーヒーでした。ショートブレッドみたいな上品で豊かな甘みがあって、絶妙な酸味がからむ。
さて、母が楽しげにコナの解説をする傍ら、僕は無気力にぼけーっとしてました。
あれだけゾクゾクさせられたミューズのアルバムとかですら興味を引かない…これは本格的に精神いかれちまったかなぁなんて他人事みたいに考えてました。
で、入れ立てコーヒーが目の前に出されました。
先に飲んだ母は、ああ、この味を待っていたと感嘆しました。
僕はテーブルにあったビスケットを適当にかじりつつ、コーヒーを飲みました。
それが、もうとてつもないうまさだった！
今まで一度も飲んだことのない味だったけれど、確かにコーヒーでした。
妙な話ですが、コーヒーの売りであるところの香りよりも遙かに強く僕を魅了したのは”のどごし”でした。
のど一杯に広がる、温度と味がこの上ない幸福感を催させたのです。ココアやほかのホットドリンクでは未だかつてこんな体験は出来ていません。
「う、うまい」
思わずつぶやくと母は大爆笑してました。
で、この味が分かる歳になったか～と母親ぶって（実の母ですがｗ）感慨にひたってました。
中毒
それから僕のコーヒー観はガラッと変わったというわけです。
数日後のメモにはこんな記述が。
朝のけだるいのどを優しくなでるコーヒー
昼のたるんだ心をそっと癒すコーヒー
夜のイラついた胸を乱暴な優しさで通り過ぎるコーヒー
眠れぬ夜には理由になってくれるコーヒー
はい、中毒状態です(^-^)
来週母に会うので、そのときは是非引き立ての激うまコーヒーをごちそうになりたいっす！
